アメリカはタリバン復権を後押しし、アフガニスタンの民意もそれを支えた 民主化が失敗した理由は何か。これからどうなるのか【アフガン報告】6回続きの(3)
「同じ事が20年も繰り返されてきた。その結果、憎悪と報復心を生んだ」。死亡したアフマディのいとこ、20代の女性ハミダ=仮名=はそう訴え「アフガン人は(米軍や政府軍に立ち向かった)タリバンを応援すべきだ」とまで言った。ハミダのようにアメリカと民主政府への不信から、タリバンを評価する人は少なくない。 ▽アメリカとタリバンの「ドーハ合意」とは カルザイとのインタビューに戻ろう。カルザイは「過酷な軍事作戦」が多数の民間人を巻き添えにした失敗に加え、米軍がアフガン撤退を強行したことがタリバン復権の直接の要因だと訴えた。特にトランプ政権下の2020年2月にアメリカがタリバンと結んだ「ドーハ合意」を非難した。 アフガンでの「米史上最長の戦争」にアメリカ世論の厭戦気分が広がったことを背景としたドーハ合意は、タリバンが民主政府との対話を開始しテロ組織と決別することを条件に、米軍が14カ月以内に完全撤退するとの内容。詳細は不明だが、秘密の付属文書が存在するとされる。
この合意が、政権を力ずくで奪っても構わないという「ゴーサイン」をタリバンに与えた。カルザイは「それが現実に起きたことだ。アフガン国民はそう考えている」と明言した。 カルザイ政権で外相を務めたランギン・スパンタ(70)は「アメリカにとって(アフガンよりも)ライバルとしての中国の台頭が問題となっていた」と指摘する。アルカイダと、次世代の過激派組織「イスラム国」(IS)が弱体化し、米軍にとってアフガン駐留の重要性は下がった。だから早期の撤退を決めたという見方だ。 「タリバンをテロ組織から準国家に格上げして扱い、アフガン政府を抜きに合意を結んだ」。スパンタはアメリカのご都合主義を批判する。 ▽タリバン復権を歓迎する理由 タリバン復権で米軍や民主政府軍との戦闘が終了し、アフガンの治安は改善した。長年の戦禍に苦しんだアフガン人にとってその意味は大きい。 南部カンダハルはタリバンの本拠地。日本のNPO法人が運営する病院を訪ねると、全身を覆うブルカ姿の女性たちが診察を待っていた。医薬品は不足気味だが20年前に比べ乳児死亡率は大きく改善した。助産師モハシナ(22)は「治安が良くなり皆安心して通院できる」と話した。医師ムハンマド・ワリ(55)は「タリバン復権で戦闘が終わり市民は歓迎している」と語った。