五輪アスリートら、教員免許なしでも先生に 「大舞台での経験生かし生徒指導」採用拡大へ動き出す
オリンピックやパラリンピックなどに出場経験のあるトップアスリートの教員採用の拡大に向けた動きが全国的に動き出そうとしている。先進自治体の京都府では2007年度の教員採用試験から、高度な専門知識や技能を持つ人材を対象に、教員免許なしで受験できる「スペシャリスト特別選考」を設けている。同制度を活用して採用された計6人の元五輪代表選手が教育現場で活躍している。 【画像】大学3年でも受験OK、教員不足で「青田買い」 ■「同僚にも好影響、学校が活性化」 スペシャリスト特別選考では、五輪出場選手を含むアスリートや民間企業の研究職などこれまでに51人が採用されている。このうち、府立高で働く五輪出場歴のある「オリンピアン教員」はアテネ五輪の1600メートルリレーで第1走者で力走した山口有希さん(亀岡高教諭)やリオデジャネイロ五輪に水球男子代表として出場した竹井昂司さん(鴨沂高教諭)、ロンドン五輪で活躍した池端花奈恵さん(乙訓高教諭)のほか、山口さんとともにアテネ五輪1600メートルリレーでアンカーを務め4位入賞した佐藤光浩さん(乙訓高教諭)や、女子バレー日本代表としてアテネ、北京の両五輪に出場した大村加奈子さん(北嵯峨高教諭)ら6人がいる。 教員採用試験のスペシャリスト特別選考は、1次の筆記試験が免除となるほかは、他の受験者と同様、1次の小論文や面接、2次の模擬授業と個人面接が課される。教員免許がなくても受験でき、採用されると高い専門知識を持つ社会人に教科を限定して与える「特別免許状」が交付される。免許取得者でも受験は可能だ。 採用は若干名で毎年2、3人。多い年で5、6人、採用がない年もある。 府教委教職員人事課は「大舞台での経験や培った知識、技能を生徒の指導に生かせる。指導を受けた部活動は強くなっているほか、同僚の教員にも好影響を与え学校が活性化している」と評する。 ■定員増も「人物本位で評価」 文部科学省の採用促進策では、教職に関心のあるアスリートのリスト作成や特別免許を交付して公立学校に配置する場合、教員定数を増やす方針を示しており、「オリンピアンを採用しやすくはなるが、人物本位で評価している。これまで通り採用は継続するが、採用人数が増えるかどうかは分からない」としている。 また、25年度採用から、教員免許保持者を対象に「スポーツ・芸術分野特別選考」を開始。部活動の競技力強化が目的で、相撲、レスリング、吹奏楽で優れた技能を持つ3人をいずれも高校教諭に採用した。 京都市教委も、11年度採用から保健体育科を対象とした特別選考を設け、順次対象教科を拡大してきた。20年度から25年度採用までの6年間で、保健体育コース3人、理数工コース5人の計8人。英語コースはゼロだった。採用者の中に00年シドニー五輪で銀メダルに輝いた勧修中教諭の田本博子さんがいる。 滋賀県教育委員会は、25年に県内で開催される国民スポーツ大会に向けて15年度採用試験から、教員免許を持った競技者や指導者を対象としたスポーツ特別選考を実施している。オリンピアンの採用実績はないとしている。