水俣病「苦しみ、逃れられぬ」 京都市左京区の「水俣・京都展」で患者女性講演、夫支える思い
開催中の「水俣・京都展」に合わせ、水俣病の歴史や被害の実相を伝える講演会「私と水俣病」が14日、京都市左京区のみやこめっせであった。自身も水俣病患者で、訴訟を闘う夫を支える女性が「水銀汚染の痛み、苦しみからは一生逃れられない。怒りしかない」と声を上げた。 【写真】京都で初開催の「水俣展」 患者500人の遺影も展示 熊本県水俣市の佐藤スエミさん(69)。漁師の家に生まれ、魚を食べて育った。30歳を過ぎて「頭痛や手足のしびれに襲われた」。夫の英樹さん(70)とともに医師から水俣病と診断されたが、行政には認定されず。1995年の政治解決で医療手帳を交付され、スエミさんは認定申請を取り下げた。 未認定の英樹さんは水俣病訴訟の原告となり、夫婦の二人三脚で闘ってきたが、国家賠償請求訴訟は2022年に最高裁で敗訴が確定した。「なぜ悪いことをした国が勝つのか。被害者の身になって真剣に考えてほしい」とスエミさん。公害の実態に向き合わない国や県、司法の姿勢を批判した。 水俣病の公式確認から70年近くたった今も差別や偏見は根強く、地元住民から「まだ裁判やっとんか」との言葉を浴びることもあるという。「私たちの声を聞き、応援してくれたらうれしい」と会場に呼びかけた。 ジャーナリストの青木理さんとの対談もあり、約100人が真剣に耳を傾けた。水俣・京都展は22日まで。