「廃業と隣り合わせ」から抜け出すために 伊豆大島の製油所が椿油を核に描く観光再生策
ECサイトをリニューアル
苦境を打開しようと、高田さんは2023年、椿油製品のECサイトをリニューアルしました。2006年に立ち上げて以来のテコ入れでした。 「BtoBやECなど島外向けの売り上げは、コロナ前後でほぼ変わっていません。観光客が戻る見込みがあるかわからない状況だったので、リニューアルに踏み切りました」 支出を最低限に抑えるため、新型コロナ関連の助成金を活用。ウェブデザイナーの仕事をしている20年来の友人に、リニューアルを頼みました。 サイトには、椿油のストーリーを伝えられるよう、製造の様子を伝える動画や、椿油の使用方法、椿油を使った料理レシピなどのコンテンツを作りました。 おすすめの他社製品も販売しています。例えば、松本製油の玉締めしぼり胡麻油は、高田製油所と同じ玉締め製法でごま油を絞っているため、高い品質だけではなく、製法の継承にもつながります。
「椿屋だからこそ」のホテルに
高田さんは同時に、「グリーンホテルたかた」を開業50年で初の全面改装に踏み切りました。 「椿油はBtoBの売り上げもありますが、化粧品などはブームに左右されるため、販売価格はBtoCより下がります。うちは大量生産を行っていないため、一本の価格が下がると厳しいものがあります」 「椿油は自然の産物なので生産量にムラがあります。観光客数に左右されるのはホテルも一緒ですが、大島は部屋数が多い宿が減っており、チャンスはあると感じました」 借り入れとコロナ関連の補助金を使い、2024年4月にホテルをリニューアルオープンしました。 「ホテルを切り盛りする叔父や叔母の引退後の後継者を探さなければならず、一度は売却も考えていました」といいます。幸い、高田さんのいとこの夫の竹内健さん(39)が料理を作ることができたので、後継者として声をかけました。 リニューアルのコンセプトは「椿油屋だからこそできるホテル」です。椿油の成分の約86%はオレイン酸という脂肪酸で、血中の悪玉コレステロールを上げにくいとされています。サイクリストなども多く訪れる伊豆大島は、健康志向との相性が抜群です。 「島内では椿フォンデュや天ぷらを椿油で使うことは多々ありますが、グリーンホテルたかたではアヒージョなど、椿油を使用したメニューを開発し、提供したいと思っています」 ホテルは椿の木に囲まれており、その雰囲気に合わせて和モダンの落ち着いた内装に仕上げました。ロビー、食堂、客室と大幅にリニューアルしています。 今まで使っていなかったオンラインの宿泊予約プラットフォームにも情報を掲載し、宿泊者と売り上げのアップを目指します。「継承後に返し続けていた借入金も、ホテルの改修費が加わり、継承時とほぼ同額になってしまいました。でも、ここが踏ん張りどき。ホテルが再び盛り上がれば、椿油との相乗効果も期待できます」