「日本企業は質問が多すぎる」調べればわかることも聞く悪癖に外国企業はうんざり
かつては水産物の争奪戦で中国に敗れ問題になった「日本の買い負け」が、今でも、あらゆる分野で進行していることが周知の事実になっています。調達のスペシャリスト、坂口孝則さんは、著書『買い負ける日本』のなかで、「買い負け」は一時的なものではなく、かつての日本経済の成功体験が構造的に悪影響を及ぼしていると分析します。その原因とは何なのか? 一部を抜粋してお届けします。第11回。
仕入先の負担が前提の業務
ピラミッド構造が生む慢心として、複数の外国企業から出てきた意見に「とにかく日本企業はクレームと質問が多い」があった。 なお、これから紹介するエピソードは本質的なものではない。ただ以前、情報通信業の会社から面白い話を聞いた。海外企業から調達した商品の段ボールにお菓子のグミが混入していたという。社内は大騒ぎになり、品質管理部門が不良レポートを要求したり、早急に品質改善体制を構築するよう依頼したり、それより緊急のテレビ会議を開催せよと叫んだり、と大混乱していた。 そこで日本企業側は大人数を揃えて、テレビ会議を開催すると、海外企業側の参加者は数名。他国の企業はこれだけの騒ぎになったことはないと呆れていた。しかし異物混入は問題だと指摘すると、海外企業は「グミを納入品に添えておくのは、一つの冗談であり、航空業界の顧客は粋なプレゼントとして受け取ってくれる」という。 そのうえで、海外企業は「グミでこんなに大騒ぎする必要ありますか」と述べたという。日本企業側は、それでも不良レポートを提出してもらうべきか議論していたらしい。繰り返すと、これは本質的な話ではないし、笑い話かジョークととらえるべきだろう。しかし、これは極端な例だが、梱包上の微細な汚れなどへの質問も多いのが日本企業という。 その他、日本企業からは恒常的に問い合わせが相次ぐ。たとえば半導体ならば、仕様・使用法、データシート……。その多くは半導体メーカーのホームページに掲載されている。とはいえ、「見てください」ともなかなか言えない。仕入先の手間暇はコストにほかならないが、あまり意識がなさそうだ、とも。 日本人の英語力の低さをあげる向きもある。多くの製品情報がウェブ上であふれているものの、それらの大半は英語だ。大手企業ならまだしも、中小企業では自分の読解が正しいのか自信がもてずに、メーカーに日本語のドキュメントを要求する例が多い。 それでもたくさん買ってくれるから、とこれまでは仕入先が日本語に翻訳してくれるケースもあった。しかし現在では翻訳を待たずに自社でスピードを上げねばならない。しかし日本企業は絶対的に遅い。 ただ、ここでやや疑問がある。私の勤務経験では、設計者たちは英語のドキュメントを読みこなしていたし、会議も英語で対応していた。この疑問を複数者にぶつけると、私が勤務していたのは大企業だったので特殊例だ、と断言されたうえで現状を教えてくれた。「英語ができる設計者もいるんです。あなたが働いていた企業もそうだったんでしょう。しかし、実際の設計をするのは仕入先の日本企業に勤める設計者なんです。レベルが低いと言うつもりはないが、やはり『こんなことを?』と思ってしまう問い合わせは多い」とのことだった。