<STAP細胞問題>野依理事長退任 理研トップとしての責任とは
日本の科学界に衝撃を与えたSTAP細胞問題。理化学研究所(理研)はアクションプランを作成して信頼回復に努める一方、STAP細胞の再現実験や研究不正の調査などに取り組んできました。しかし、STAP現象はES細胞混入による可能性が高いとしたものの、真相ははっきり分からないまま、この問題の幕が引かれようとしています。その組織トップである野依良治理事長が今月末で退任することが決まりました。23日の会見では進退について明言しませんでしたが、何が語られたのでしょうか。そして、理研トップの責任とは何なのでしょうか。 【図】<STAP問題>ES細胞はなぜ混入? 真相は謎のまま幕引きへ
会見では進退について明言せず
「私は自主的に給料を返納したりもしました。それ以上、責任を取るつもりはありません」 3月23日、埼玉県和光市にある理化学研究所で、同研究所の野依良治理事長の記者会見が開かれました。STAP細胞をめぐる研究不正問題を起こしたこと、その後の事後対応で混乱を招いたことについて責任を問う記者たちの質問に対して、野依理事長は強い調子でそう繰り返しました。 野依理事長といえば、2001年に「キラル触媒による不斉反応」の研究が認められ、ノーベル賞を受賞したことで有名ですが、そのほかにも日本学士院賞など数多くの受賞歴もある化学者です。名古屋大学物質科学国際センター長など役職も数多く経験しており、2006年からは政府の教育再生会議で座長を務めています。名実ともに、日本を代表する科学者といっていい人物でしょう。そして2003年10月からは日本を代表する研究機関である理研の理事長を勤めてきました。任期は2018年3月末まであります。
理研は昨年8月、野依理事長がリーダーシップをとって、不正問題の再発防止のための「アクションプラン」を策定しました。野依理事長がSTAP細胞問題に関して会見の場に出てきたのはそのとき以来で、これまでは文書によるコメントを出すのみでした。今月20日、外部有識者からなる「運営・改革モニタリング委員会」がアクションプランに対する「評価書」をまとめ、改革は進んでいると一定の評価はしながらも、研究不正が起きた背景には「科学的批判精神に基づく、十分な実験結果の相互検証」が欠けていたことなどを批判しました。野依理事長もそれを認め、会見の冒頭でこう話しました。 「心からおわび申し上げる次第であります。一方で、委員会からは取り組みが機能し始めているという評価もいただき、さらに建設的な提言もいただきました。これらを真摯に受け止め、職員とともに取り組んでいきたいと考えています」 今回の会見は、下村博文文部科学大臣が理研を視察し、野依理事長が「評価書」について大臣に説明したことを受けてのものであると説明されました。 会見では、野依理事長が今月末で理事長を辞任する意向を固めている、との報道についての質問が相次ぎましたが、野依理事長は「いまの時点では申し上げることができないので、お許しいただきたい」と、辞任するとも辞任しないとも明言を避けました。 辞任するのであれば、やはりそれはSTAP細胞問題がその理由なのか知りたいところですが、前述の通り、自分は給料の一部返納以上の責任をとるつもりはないことを繰り返しました。誰がES細胞を混入したか分からず、それが故意か過失かもわからないままであること、刑事告訴をしないことについても「専門家がそう判断するのですから」と強調するのみでした。