復活の兆しが見えるウイリアムズに、元メルセデスのボウルズ代表が持ち込んだ勝利の哲学あり「チームはもう“その日暮らし”ではない」
創業一家であるウイリアムズ家が離れ、新たにドリルトン・キャピタルがオーナーとなって以降のウイリアムズは、元メルセデスの戦略家ジェームス・ボウルズをチーム代表に起用するなど、かつての栄光を取り戻すための改革を着々と進めている。 イケメンF1マシン勢揃い! 決勝出走僅か1回のマシンですら格好良かった……まさに黄金時代。1992年のF1マシン これまで、7度のドライバーズタイトルと9度のコンストラクターズタイトルを獲得したウイリアムズ。特に1980年代~1990年代は圧倒的な強さを誇っていたが、その実力には徐々に陰りが見えていき、2018年以降は下位チームに成り下がってしまった。これは長年の投資不足も影響していた。 しかし、1年1年をただ生き残るための「その日暮らし」のような状況からは徐々に脱却している。オーナーが変わったことや、F1が予算制限を導入したこともその追い風となった。チーム代表のボウルズと、昨年途中に技術責任者として加入したパット・フライは、チームが5年後にあるべき姿を描き出し、そこに向けての中間ステップを整えることができた。 大きなレギュレーション変更のある2026年までに、ウイリアムズが飛躍的な進歩を遂げることは考えづらいものの、フライはチームが「勝利のマインドセット」を身に付ける必要があると語る。 ボウルズがメルセデスから持ち込んだ勝利のマインドセットは、既にチームに変化をもたらしつつあるようだ。これはボウルズの言葉を借りれば、いわゆる自転車操業からの転換を指す。 ウイリアムズの車両パフォーマンス責任者であるデイブ・ロブソンは、motorsport.comに次のように語った。 「ジェームスが解放してくれたものはいくつもある」 「一番大きいのは、我々が今日と明日のことばかりを考えないようになったことだ。これは久しぶりのことで、中期的、長期的に物事を見られるようになる」 「2014年や2015年から後の何年間かと比べると、全く異なる。今や自転車操業のその日暮らしではない。かなり変わったんだ」 ロブソンによると、ボウルズはオーナーから強い権限を与えられており、そのことが迅速な意思決定や健全な企業文化の実現に繋がったと言う。 「どのように研究開発を行なうか、本当の目標は何なのか、そういった哲学のようなものがまったく違ってくる」とロブソンは説明する。 「その上、彼が入ったことで、どこに弱点があるのかを正確に見抜くことができた」 「そのような経験ある人材が入るということは、それほど多くの議論をせずして投資ができ、投資家もその投資をする用意ができるということだ。そして今、我々はあるべき姿について明確な自信を得た」 「以前は、たとえ資金があったとしても、なぜそこに投資するのが適切なのかを理解するために、あらゆる作業をしなければならなかった。そこがこれまでとの大きな違いだ」 「彼のリーダーシップの取り方はまったく違う。みんながそれを受け入れるには少し時間がかかったが、今はみんながそのやり方を理解している。本当に新鮮だよ」 「オープンで正直であること、失敗してもそこから学べば問題ないということを皆が理解していることが、以前とは違う。彼のチーム運営方法全体が、これまでとは違っていて、これまでよりも良くなっているんだ」 ウイリアムズはメルセデス製パワーユニットを使う契約を2030年まで延長した。そんな今、チームの長期的な命運の鍵を握るのが、老朽化したインフラ設備への多大なる投資だ。 ただその一方で、2024年マシンの開発においても既に新たなチーム方針の成果が出ているとロブソンは感じている。 「来年(2024年)のマシンであるFW46の開発に取り掛かると、その新しい姿勢が社内全体に波及しているのがわかる」 「サーキットでは、ファクトリーよりもはるかに多くの頻度でジェームスを目にする。おそらく、それなりに早く適応できた方だと思うが、ここ数ヵ月であらゆるところに効果が出ているのがわかる」 「それを具体的なパフォーマンスに繋げるにはまだ1、2年はかかるだろうが、変化しているという実感はある」
Filip Cleeren