スペインの小さな街でイラストを描き続ける唯一の日本人女性の現在 『旅人マリーシャの世界一周紀行』第368回
「世界一周して結局どこの国が一番良かった?」 これは私が一番よく聞かれる質問だが、必ず答えているのはスペインとメキシコ(あとハワイ)。 【画像】見る者をほっこりさせる、あお木たかこさんのイラスト 地中海やカリブ海などの超絶美しい海、美食の街サンセバスチャンや無形文化遺産の伝統料理、未完の建築サグラダ・ファミリアや古代遺跡チチェン・イッツァ、ユニークなお祭りと人々の陽気さなど、とにかく魅力にあふれた旅先で、住んでみたいとも思う国だった。 また偶然にもそれらの国では、現地在住の日本人女性との縁があった。遊牧民のように世界を移動する旅人の私は、いつかは自分の居心地の良い場所を見つけて定住してみたいと思っていたが、彼女たちはまさにそれを実現し、さらには好きなことを生業にして暮らすという憧れのライフスタイルを歩んでいた。 以前、当コラムにも登場した彼女たちだが今はどうしているのだろうか。パンデミック後は生活や心境の変化などがあったのだろうか、近況を伺ってみた。 ■スペインの小さな街でイラストを描き続けるあお木たかこさん 2019年、私がスペインを周遊していた時のこと。聖地巡礼路の途中にある小さな街エステーリャ(エステージャ)へ着くと、ちょうどお祭りが開催されていた。 青空の下、白い服に赤いスカーフを巻いた伝統的な衣装の人々が、昼間からワインを飲み、歌や踊りを楽しんでいる。その様子を私が興味津々に見ていると、 「お前日本人か? この街にもなんと日本人が住んでいるぞ! 呼んでくるから待ってろ!」 通りすがりのセニョール(おじさん)に紹介されたのは、この街に住む唯一の日本人のあお木たかこさん。まさに『こんなところに日本人!』だった。 一週間も続くというお祭りでお疲れのところ、彼女は私を地元の仲間だけが集まるソサエティやミニ牛追いまつり(本場はパンプローナで行なわれる「サン・フェルミン祭」)など色々なイベントに案内してくれた。やっぱり現地の人との交流は旅の醍醐味である。