手塚理美「7歳から代役モデルを始めて」高校も選べず、友だちも作れない日々から『ふぞろいの林檎たち』の転機まで
山田太一さんの脚本もとても素敵で、毎週、本をいただくたびに「次、どうなるの!?」とワクワクしながら読んでいました。素晴らしい作品にめぐり合い、演技というものを勉強させていただくことができ、感謝しています。 その後、『男女7人』をやらせていただき、お芝居の面白さがようやく理解できるようになってきましたね。
■『男女7人秋物語』後に訪れたロンドンで気づかされたこと ──『男女7人秋物語』では、小悪魔的な役どころを魅力的に演じられていました。
手塚さん:それまで優等生的な役柄が多かったので、島村一枝というちょっとクセのある役をやらせていただいたのは、すごく嬉しかったですね。 ドラマの撮影が終わったのが20代後半。その後、初めて3か月の長期休みをもらえたので、ロンドンに滞在し、『危険な関係』という舞台でご一緒させていただいた演出家のデヴィッド・ルヴォーさんを訪ねたり、舞台を観に行ったり、英語学校にも通いました。 ロンドンでは、地下鉄のストライキに巻き込まれたり、スリにあったり、バスの降り方がわからず四苦八苦したりと、カルチャーショックの連続。自分の「当たり前」が、世の中の常識ではないと、身をもって学びました。
たった3か月間のロンドン生活でしたが、誰にも気兼ねせず、気ままに過ごした日々は、すごく新鮮で、心地よいものでしたね。 明日、仕事があるわけでもないし、時間はいくらでもある。誰も私のことを知らないから、たとえ靴ずれを起こして裸足のまま街のなかを歩いたって平気。そんな開放感で、心が生き返りましたね。 PROFILE 手塚理美さん てづか・さとみ。1961年、東京都生まれ。俳優。7歳でモデルとして活動をスタート。1975年にユニチカ2代目マスコットガールとして芸能界に本格デビュー。1982年、NHK朝の連続テレビ小説『ハイカラさん』に主演。以降、『ふぞろいの林檎たち』『男女7人秋物語』など、様々なドラマや映画で活躍。2021年には、映画『メイド・イン・ヘヴン』で主演。
取材・文/西尾英子 画像提供/手塚理美(えりオフィス)
西尾英子