手塚理美「7歳から代役モデルを始めて」高校も選べず、友だちも作れない日々から『ふぞろいの林檎たち』の転機まで
■本気で叩かれ涙が出たとき「演技を理解」できるように ── どうしてでしょう? 手塚さん:自分ではない何者かになる感覚が理解できなかったし、心にバリアを張っていたから、「他人なんてなりたくない。私は私」という反発心がありました。 でも、高校を卒業して芸能活動を続けるなかで、「絶対に勉強になるから」と事務所から勧められ、1981年に名取裕子さん主演の連続ドラマ『娘が家出した夏』(TBS系列)で、女優に初挑戦したんです。
私が演じたのは、家出をする少女の役でした。そのなかで、お父さんに連れ戻され、引っぱたかれるシーンがあったのですが、「本気でぶったほうがリアルな演技になるから」というディレクターの指示で、本番では本気でぶたれました。 初めての経験だったので、びっくりして泣いてしまって…。そうしたら、「その状態でセリフを言ったら、それが演技になるんだよ」と言われ、「なるほど、演技とはそういうものなんだな」と。 心をずっとガードしてきたので、人前で感情を出すのがすごく苦手でしたが、なぜかそのときは涙があふれてきて、なんだかすごく不思議でした。
そのときに初めて、「演技のお仕事というのは、自分のなかに眠っているものが引き出されて、新たな自分を入れることなんだな」と感じ、「面白いかもしれない」と思ったんですね。 ── その後、1983年に『ふぞろいの林檎たち』、1987年には『男女7人秋物語』と、時代を彩る話題のドラマに次々と出演されました。 手塚さん:『ふぞろいの林檎たち』の共演仲間とは、当時のことを「ふぞろい学校」と呼んでいます(笑)。みんな右も左もわからない駆け出しの新人だったので、演出家の鴨下信一さんに、いつも怒られてばかりで。「これ宿題ね!」といって帰られてしまうこともありました。収録が終わると、「何がいけなかったんだろう…」と、みんなで話しあっていたことが懐かしく思い出されます。