「この世界は99%のリアルでできている。でも、あと1%は?」 墓を巡るミステリー「破墓/パミョ」
TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽や映画、演劇とともに社会を語る連載「RADIO PAPA」。今回は韓国映画「破墓/パミョ」について。 * * * 「もともと韓国では山ひとつがお墓になるんです」 長い付き合いの映画プロデューサー、李鳳宇さんに教えてもらった。 「破墓/パミョ」は、その墓を巡るミステリーである。 葬られてはならない場所に埋められてしまった先祖が不穏に蠢いている。これは破墓(墓を別の場所に移す)しかない。 墓の反乱を収めるため、墓地の吉凶を見る風水師(チェ・ミンシク)、お祓いをする巫堂(キム・ゴウン)、改葬を仕切る葬儀師(ユ・ヘジン)らが集められた。 彼らが山の墓地に合流するなり、「邪悪なものたち」がひたひたとあたりに迫り、迷信とリアルの狭間での絶妙な綱渡りに手に汗を握るストーリーが始まる。 風水師役のチェ・ミンシクは、「シュリ」「オールド・ボーイ」などで言わずと知れた韓国の国民的俳優である。彼にとっては初のオカルト映画出演となったが、「科学と霊的なるものを合体させ、エンタメに仕上げて新しい世界を構築する。オカルトの面白さはそこにあるんじゃないか」と言った。
冒頭、彼は霊気を得るため、墓地の土を舐める。「自然と人のつながりを重視し、吉凶禍福を見つめるのが風水師。それがそういう演技に繋がった」 「この世界は99%のリアルでできている。でも、あと1%は?」との言葉が印象に残った。考えてみれば、その1%が人の心を左右し、物事は動いていくのかもしれない。その意味で1%の不思議は神の意思にも思える。 「破墓/パミョ」は墓を巡る血族の壮大な物語。鑑賞後、僕は宮崎駿の一連の作品を思い出した。人と精霊と動物たちとの会話。恐怖というより、むしろ豊潤な自然の循環の中にいる自分を感じた。 チェ・ミンシクにそれを伝えると「一理ある。はじめは人間と霊たちとの葛藤の物語だった。それが次第に解消されていくのです」。 先祖を敬い、家系を遺す。そんな韓国で本作は今年1200万人を動員、7週連続第1位を記録した。 そういえば、と彼が言った。「この前、韓国の歌番組で『川の流れのように』がオンエアされていてね。(秋元康さんの)歌詞が詩のようで、涙が出たよ」 チェ・ミンシクは親日家。最新作のプロモーションで来日するのが楽しみと笑った。 (文・延江 浩) ※AERAオンライン限定記事
延江浩