PFAS水質検査 政府の義務化方針で負担増懸念する声も
健康への影響が懸念される有機フッ素化合物(PFAS)を巡り、水質検査などの義務を伴う「水質基準」に引き上げる政府の方針が明らかになった。先月公表の全国調査では、法的義務がないことなどを理由に水質検査を1度も実施していなかった水道事業者が4割に上った。義務化で検査費用などの負担増も予想され、国に財政支援を求める声が早くも聞かれる。 調査では、全国の水道事業者を対象に令和2年度から今年9月末までに実施した水質検査の結果などの回答を求めた。回答があった3595水道事業のうち、水質検査の実績があったのは2227事業。一方、「実績なし」と回答したのは1368事業に上った。 国は令和2年にPFOSとPFOAの2物質が飲み水に含まれる濃度の目安を設定したが、水質検査などの実施に法的拘束力はなく、努力義務にとどまる。今回の調査は、社宅や集合住宅など自家用の水道を持つ全国約8200カ所の専用水道も対象で、政府は近く集計結果を公表する。 政府の専門家会議のメンバーを務める京都大の原田浩二准教授(環境衛生学)は「専用水道の水源は主に地下水。仮に汚染が発覚しても、飲み水として使うかどうかは設置者の判断に委ねられる」と指摘する。ただ、独自の水質検査で目標値を超えたことを公表し、井戸水の使用を中止したケースもある。原田准教授は「専用水道では水源の切り替えなどの対策が取りづらい場所も多く、汚染源の特定が何より重要になる」としている。 水質検査の義務化方針には水道事業を担う自治体などから懸念の声が上がる。令和3年度に暫定目標値の最大11倍の高濃度を検出した岐阜県各務原市では、浄水場の活性炭交換費用として県が約1億2千万円を負担。沖縄県金武町では約3億円かけて新たな送水管を整備した。汚染が確認された自治体担当者は「水道事業は水道料金で維持するのが基本。PFAS対策で住民負担を求めるには限界がある」と話す。(白岩賢太)