パリ五輪では「過去最多193人の選手がLGBTQを公表」も「日本人はゼロ」…なぜ日本では性的マイノリティに対しての偏見がなくならないのか?
日本で性的マイノリティの人々への偏見がいまだ強い理由
――本書は9人のLGBTQアスリートたちの告白という形で綴られていますが、岡田先生は監修する上で、どのようなことを感じられましたか? ゲイ男性、レズビアン女性、トランスジェンダーの方など性的マイノリティの人々がスポーツ界において直面する困難には、共通するものがあることを確認できました。そして英米の文化とは違う、日本特有の解釈や難しさがあるなと。 ――日本特有の難しさとは。 身体的な性別と社会的な性役割を分けて考えるジェンダー概念は英語圏から生まれたもので、2000年代あたりからスポーツの分野でもLGBTQ当事者の声が社会に届くようになり、可視化が進んできました。 しかし、日本や東アジアのスポーツ界は、性的マイノリティのアスリートに関する差別や偏見がまだまだ根強い。そのことがLGBTQアスリートがスポーツに打ち込むことを困難にしていると感じます。 ――なぜ、日本にはカミングアウトしづらい社会的風潮があるのでしょうか カミングアウトをしても、自分の立場が守られたり平等に扱われるという心理的安心感がまだ確立されていないからではないでしょうか。一方で、日本ならではの“あいまいさ”のようなものもあると感じています。 ――それは、どういったものでしょうか。 本書の中でも紹介されていましたが、女子スポーツ界には、レズビアンやFtM(Female to Male出生時に割り当てられた性別が女性で、性自認が男性というトランスジェンダー)、あるいは既存の女性ジェンダーという枠組みにフィットしない人たちが、ある程度受け入れられていという状況があります。 女子サッカー界を中心に“メンズ”と呼ばれることもありますが、女子サッカー界以外でもそうした存在はいわゆる“ボーイッシュ”などの言葉でくくられ、偏見の目を向けられることが比較的少ないという特徴があります。女性らしさの枠にはまらなくても、スポーツをしているときは自由になれる――こうした状況は英米とは異なる日本的な特徴だと思います。
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