【2024年 ドラゴンズ10大ニュース】『別』ライデル・マルティネス、「ドラゴンズで引退したい」3年後、甘い未来はなくとも…
今季のプロ野球は、過去最多を更新する2668万1715人もの観客が観戦した。中日も主催71試合で233万9541人を動員。野球は愛され、中日も支持されている。だからこそ「4年連続」は許されない。年末恒例の「漢字で振り返る竜の10大ニュース」。来季こそ「どらポジ」で行こう! ◆2024年 漢字で振り返るドラゴンズ10大ニュース【写真複数】 ◇ ◇ 大好物の牛タンに白米とキムチさえあれば、彼は冗舌になる。亡命してまで大リーグでプレーしようとは思わない。先発転向も望まない。故郷での思い出や、来日直後のホームシック。夫人も一緒だったときは、2人のなれ初めも聞かせてくれた。ライデル・マルティネスが「ノー」と言うのは、肉の焼きが甘かったときくらい。だけど僕が何度「残れないのか?」と尋ねても「イエス」とも言わなかった。「難しいかもしれない…」。そう答える彼の顔は、少し寂しそうに見えたのを覚えている。 絶対的クローザーの流出。中日のマイナスと巨人のプラスを考えれば、覚めることのない悪夢である。だが、彼はいわゆる”助っ人”ではなかった。ビジネスに徹するなら、僕の質問に「ノー」と即答したはずだ。 キューバ生まれだが、野球選手としてはナゴヤ球場育ち。長身で痩せていた。「小笠原(孝)さん」「森(繁和)さん」。バント処理、クイックモーション、スプリットの習得…。1から教えてくれた恩人とのエピソードもスラスラと話してくれた。 唐突に「僕には夢がある」と語り始めたことがある。それは「ドラゴンズで引退したいんだ」。彼は中日という球団に愛着も恩義も感じていた。11月のプレミア12で敗退後、マルティネスは中日と最後の話し合いのため、わざわざ台湾から再来日した。そして中部国際空港で浮かべた涙に、誰もが別れを悟った。 だが球団も頑張った。ざっくりした契約内容を教えてもらったが、僕の想像をはるかに超えていた。しかもキューバ人のマルティネスには、本人への契約とは別の金銭が必要だ。その額は大リーガーが代理人に支払う割合を軽く上回る。最後まで残留を模索した球団とマルティネス。結果(移籍)が同じでも、経過にはどちらも誠意と熱意があったことだけは伝えておきたい。 通算166セーブ。せっかく教えた名球会の入会資格は興味なさげに聞き流した彼が、食い付いてきた情報がある。 「ケガさえなければ、君は3年後のオフに日本人扱いとなる。価値がさらに上がるんだ」 FA権を手にすれば、外国人枠から外れる。そのとき、彼はまだ31歳。脂が乗りきったさらにその先に、中日に復帰して夢の引退を…。いやいや、そんな甘い未来はないだろう。彼は環境を変えるのを嫌がるが、同時にいったん入ればその郷に染まる適応力の持ち主なのだ。さらばライデル。春の沖縄でまた会おう。 (渋谷真)
中日スポーツ