日銀正常化路線に政治の逆風、石破首相発言で年内利上げ観測が後退
(ブルームバーグ): 石破茂首相の利上げに慎重な発言を受けて、市場では日本銀行による年内の利上げ観測が後退している。金融政策の正常化を進める日銀に政治の逆風という悩ましい要素が加わった。
石破首相は2日、植田和男日銀総裁と会談後、政策金利の引き上げに関して「政府としてあれこれ指図をする立場ではない」としながらも、「個人的には現在そのような環境にあるとは思っていない。追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と記者団に語った。
市場では石破首相が日銀の独立性を尊重するとみられていただけに、今回の発言を受けて円安が急速に進んでいる。衆院選をにらんだハト派的な発言との指摘もあるが、一段の円安は輸入物価の上昇を通じた消費者物価の押し上げ要因となり、政府の物価高対策と矛盾する。日銀は円安に伴う物価上振れリスクの高まりも理由に7月に利上げしており、今後の金融政策運営は難しい状況に直面する可能性がある。
首相発言の狙いについて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジストは、27日投開票を表明している総選挙をにらんだものとみている。年内に利上げするのは政治的時間が短い上に国民からの理解を得るのも困難であるとし、想定している12月会合での追加利上げの確度はやや低下したのではないかと述べた。
先月27日の自民党総裁で石破氏が選出された後、1ドル=141円台に上昇した円相場は、3日に一時1カ月ぶりの147円台まで売り戻された。
石破内閣の支持率は岸田内閣発足時を軒並み下回った。報道各社の世論調査では共同通信が50.7%、日本経済新聞が51%、読売新聞が51%など。共同通信によると、調査手法が異なるため単純比較はできないが、最近の内閣発足時の支持率は2021年10月の岸田内閣が55.7%、20年9月の菅内閣が66.4%、12年12月の第2次安倍内閣が62.0%だった。
石破内閣支持率、岸田政権の発足時下回る-各社世論調査