日銀正常化路線に政治の逆風、石破首相発言で年内利上げ観測が後退
みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは3日付リポートで、近年の内閣と比べ支持率が低いスタートとなったことを背景に、 石破首相が衆院選に向けて日銀の早期追加利上げ観測をけん制して円安や株高を促すことは「窮余の一策という面もある」と指摘。その上で、「日銀が年内といった早期に追加利上げに動く可能性は、政治の面から明らかに低下した」としている。
ブルームバーグが9月会合前の同月6-11日に実施したエコノミスト調査では、日銀の追加利上げの時期は12月会合の53%が最も多く、10月の15%と合わせた年内の予想は7割弱を占めていた。19%は来年1月を予想した。
植田総裁は2日の首相との会談後、金融政策運営について「極めて緩和的な状態でわが国経済をしっかり支えていく」との考えを表明。経済・物価が日銀の見通し通りに実現し、見通しに沿って経済が動けば「金融緩和度合いを調整していくことになるが、本当にそうかどうかを見極めるための時間は十分ある」と述べた。9月の記者会見での発言内容から「変化はない」とも説明した。
林芳正官房長官は3日午前の記者会見で、石破首相は金融政策の具体的手法は日銀に委ねられる方針だと承知していると語った。石破首相と植田総裁の会談では、「市場の動向を緊張感を持ち、冷静に注視していくとともに、市場とも丁寧にコミュニケーションをとっていくため、互いに緊密に連携していくことを確認した」と述べた。
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Sumio Ito, Yui Hasebe