もう売却しかないのか、「賃貸アパート」を相続するも築古、駅20分で4割が空室…住宅ローンの返済どころか、預貯金が食いつぶされる破目に【相続専門税理士が解説】
不動産会社は「家賃値下げ+リノベ」を提案するが・・・
不動産管理会社の話では、手っ取り早く入居者を見つけるには、いまよりさらに家賃を下げるか、思い切った修繕や改良を行うしかないそうです。 提案されたリノベーションは、畳をフローリングに替え、各部屋にケーブルテレビ回線を設置するなど、かなり大掛かりなものです。そのためにはまとまった費用が必要となり、相談者は、さらなる自己資金の投入が求められます。 本来であれば、賃貸アパート経営に必要な経費は、家賃収入から賄うべきものです。そうでないと、相談者のように家計を圧迫することになってしまうからです。 築古になれば修繕が必要になるのは当然ですから、事前に計画的な費用の積み立てを行っておくべきでしょう。今回相続した物件のように、その費用が準備されていないなら、言葉は厳しいですが、実質的に「負債」を引き継いだことと同義だといえます。 相談者は、家賃収入を住宅ローンの返済に回すどころか、いまの預貯金が食いつぶされ、ヘタをしたら家計の破綻リスクもある状態となっています。 その状況なら、むしろ賃貸アパート経営は止めたほうがいいでしょう。思い切って解体し、更地にして売却することをお勧めします。いまの立地での賃貸経営は苦しいですが、建売分譲住宅としてなら売れるかもしれません。ただし、現在の入居者には立退き料を支払い、部屋を空けてもらう必要があります。
親の相続財産をどうするのか、ベストな選択を
長年お父様が保有していた不動産ですから、子どもとしては手放すのにためらいがあるかもしれません。しかし、ご自分の遺産が大切なお子さんの将来を脅かすのは、亡きお父様も本意ではないでしょう。 アパートの土地を売却すれば、その代金でご自宅マンションの住宅ローンを繰上げ返済することができます。あるいは、土地を売った資金を元手に、NISA等による資産運用を行ってもいいでしょう。住宅ローン金利よりも投資信託の利回りのほうが高いですから、その場合は無理して住宅ローンを返済する必要はありません。 不動産経営で重要なのは「確実に利益を生み出せるかどうか」という点です。「親からもらった財産だから…」などといって、ご自分のお金を注ぎ込んでまで保有を続ける人がいますが、それでは意味がないのです。 状況を冷静に見極めたうえで、ご自身にとってメリットとなる、ベストな選択をしてください。 岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
岸田 康雄