もう売却しかないのか、「賃貸アパート」を相続するも築古、駅20分で4割が空室…住宅ローンの返済どころか、預貯金が食いつぶされる破目に【相続専門税理士が解説】
収益物件を「収益を生み出す状態」で維持するには、費用をかけたメンテナンスが不可欠です。もし収益物件を相続した場合、メンテナンス費用の確保ができておらず、所有者の持ち出し必須となっていたら、それはすでに「収益物件」の体をなしていないかもしれません。相続専門税理士の岸田康雄氏がやさしく解説していきます。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
相続した築古アパート、実は「とんでもない負動産」で…
父親の賃貸アパートを相続した40代の男性の相談内容をご紹介します。 亡くなった父が経営していた賃貸アパートを相続しました。私は自宅マンションを住宅ローンで購入しているため、アパートの家賃収入で住宅ローン返済ができると考えたのですが、よくよく調べたところ、アパートのせいで、逆に家計の支出が増加することが判明しました。いったいどうしたらいいのでしょうか? 男性のプロフィールと資産状況などは以下のようになります。 ★相談者のプロフィールと資産状況 年 齢:42歳 勤務先:都内の上場企業 年 収:約800万円 家族構成:40歳の専業主婦の妻、10歳の長女の3人暮らし 自 宅:中野区のマンション、35歳で購入 住宅ローン:35年、毎月の返済額10万円 ★相続人 本人と70代の母親 ★相続財産 戸建ての自宅、築古の賃貸アパート、現預金、有価証券、絵画、骨董品 ★それぞれの遺産分配 母親:自宅、絵画、骨董品、有価証券 相談者:木造2階建て築40年の賃貸アパート、現預金 この40代の相談者は現在、とても厳しい局面に立たされている状態です。 自宅マンションの住宅ローンは35年で組んでおり、返済は70歳まで続きます。ただし、勤務先は再雇用制度があり、70歳まで勤務可能とのことです。そのため、細く長くローンを返しつつ、子どもの教育費や夫婦の老後資金を無理なく貯めようと考えていました。 相続人はご本人と70代のお母様の2名です。お母様は「配偶者の税額軽減」の特例を適用したため相続税がゼロになりましたが、相談者は相続税がかかったことから、相続した現預金を納税に充てました。その結果、手元に残った相続財産は、賃貸アパートの土地と建物のみでした。 ここで大きな問題が判明します。相談者は、アパートの家賃収入で住宅ローンを返済するだけでなく、うまくすれば資産形成も可能かもしれないと楽観的に考えていたのですが、ふたを開けると、実際の賃貸経営の状況は、かなり厳しいものでした。 物件を管理する不動産会社に尋ねたところ、現状では全10室のうち6室しか入居しておらず、残り4室が空室です。そもそも、この賃貸アパートは駅から徒歩20分の立地で、新築でもなかなか入居者が決まりにくいところなのです。