倉田真由美さん、夫が最期に残していったのは「元気な頃には言わなかった言葉」
倉田真由美さんの夫で映画プロデューサーの叶井俊太郎さん(享年56)が、末期のすい臓がんによりその生涯を閉じたのは今年の2月のこと。病を得てからの叶井さんは、ある言葉を発するようになったという。夫が最期に妻に伝えたこととは――。 【画像】亡くなる9か月前、自転車店にたたずむ叶井俊太郎さん。黒いTシャツとデニム姿で真剣に自転車を選ぶ姿
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。お笑い芸人マッハスピード豪速球のさかまきさん原作の介護がテーマの漫画『お尻ふきます!!』(KADOKAWA)ほか著書多数。 夫の叶井俊太郎さんとのエピソードを描いたコミック『夫のすい臓がんが判明するまで: すい臓がんになった夫との暮らし Kindle版』 『夫の日常 食べ物編【1】: すい臓がんになった夫との暮らし』は現在Amazonで無料で公開中。
病気になってから夫が口にするようになった言葉
元気だった頃はほぼ言わなかったことを、病気になってからの夫は時折、口にすることがありました。 「ごめん」そして「ありがとう」がその代表的な言葉です。 勿論、元気な時でも何か失敗をやらかしたり迷惑をかけた時は、「めんご めんご」と笑いながら謝ることはありました。ただその言い方は「反省して謝っている」という感じではなく、私はいつもその笑いにつられて「もー」と怒って見せながら一緒に笑ったものでした。 感謝の気持ちを表す時も、例えば何かプレゼントをもらって嬉しい時は、「いいね、これ」「欲しかったんだよ」と喜ぶけど、「ありがとう」という言葉は滅多に使わない人でした。特に、私に対しては。「ありがとう」と言葉にすることに、照れのようなものがあったと思います。 なのに、体重が激減し身体が弱ってくると、「ごめん」と「ありがとう」が出てくるようになりました。亡くなる2、3か月くらい前からが顕著だったと思います。 私にとってこれは、嬉しいとは到底思えないことでした。