【トルコのバスはよく曲がる】EVバス市場に新たな選択肢 カルサンe-JEST
欧州車の流れを汲むデザインも魅力
市販型は10月に東京の海の森競技場で開催された『第10回バステクin首都圏』でも展示されたが、僕はその前にプロトタイプに乗る機会に恵まれた。取材対応してくれたアルテックのスタッフは、三菱ふそうトラック・バスにいた人が多く、運転をはじめバスの扱いに慣れていたことが心強かった。 そのときの印象をひとことで表せば、これまで乗車したあらゆるバスの中で、もっとも乗用車に近かった。 バスのインプレでこういうことを書くのは変かもしれないが、とにかくサスペンションがよく動いていると言う印象で、乗り心地は不快ではないし、交差点を曲がるときも安定している。さすが4輪独立懸架を採用しただけあると感じた。そしてもちろん電気バスなので静か。カルサンに対する信頼性はある程度持ち合わせていたが、今回の乗車で、さらにその印象が高まった。 この日は平坦路のみだったが、前輪駆動ということで気になる登板性能も、25%を保証している。満充電での航続距離は210km。路線バスとして使うなら十分だ。 そしてやはり、デザインについて触れないわけにはいかないだろう。面の取り方や窓まわりのグラフィックなど、日本を含めたアジアのバスとは明らかに違う造形で、トルコのクルマづくりが欧州流であることを教えられる。 バステクin首都圏には他にも日本の会社が関わった小型電気バスがいくつかあったが、いずれもベンチャーを含めた中小の会社が手がけたもので、大手メーカーが販売する電気バスは、今年発売されたいすゞエルガEVのみであり、小型はない。 大都市はともかく、地方では人口減少によりバスの需要は減っており、乗客は数人ということもある。利用者にとっては、需要に見合った小型の車両を数多く走らせるほうがありがたいし、ディーゼルエンジンより電気のほうが静かで良いと思うはずだ。 そういう意味で小型の電気バスは今の日本に求められているバスと言えるし、中国製が幅を効かせるこのジャンルに、欧州に近いトルコからの参入車両があるというのは、欧州車を数多く乗り継いできたひとりとして好ましいと思った。
森口将之(執筆/撮影)