11回の手術・小野伸二、ケガで学んだ壁の乗り越え方とは
11回の手術から学んだ感謝の心
フランスをはじめ、3度のワールドカップに選出されましたが、選手生活は決して順調なものではありませんでした。ケガが多く、プロ生活の中で11回の手術を経験。周囲から「趣味は手術?」とイジられることもありました。 特に1999年、シドニーオリンピックのアジア地区予選、フィリピン戦で負った左膝靭帯断裂のケガはきつかったですね。それまで10日間ボールを蹴らないことはありませんでしたが、この時はボールに触らない生活が3か月も続いた。チームメートが羨ましく、焦りを感じたし、それまで持っていたサッカーに対する頭の中のイメージがすべて消えてしまいました。 でも、主治医の指示に従って、1歩1歩進むしかない。復帰を目指してリハビリを続けていくだけです。その苦しさを抜けた時、「ボールと戯れる時間ってなんて楽しいんだろう」と思いました。この時間があるからこそ、苦しくても頑張れる。ただただサッカーが好きなんですよ。 ケガを通して学んだのは、感謝する気持ちです。「サッカーをしている」のではなく、「サッカーをさせていただいている」という感覚。感謝こそ、成長の根源です。 何事もいきなりのステップアップは難しい。焦らずに、目の前の壁を1歩ずつ乗り越えていく。今、僕は2児の父親となりました。子どもたちには、いつもそんな話をしています。 小野伸二/Shinji Ono 1979年9月27日生まれ、静岡県出身。1998年に清水商業高校から浦和レッズへ入団。オランダ、ドイツなど世界で活躍し、フェイエノールト時代にはUEFAカップを制覇。W杯3大会出場、五輪出場、アジア最優秀選手賞などFIFA主要大会全てに出場した唯一の日本人として多くの輝かしい経歴を残し、2023年12月3日に現役を引退。一般社団法人「CHARITY X」の代表としても活動の場を広げている。自著『GIFTED』発売中。