新橋駅前の「名物ビル」が消滅寸前…老朽化が進み営業は限界。再開発で“高層タワー”の計画も
街の至るところで再開発が行われている。まるで傷を覆い隠すかのように白い囲いができている。そんな再開発で今、急速に失われつつある古き良き“せんべろ街”。賛成派と反対派の声が錯綜する街を訪ね当事者たちに話を聞いてみた。 ⇒【写真】地下1階は約70店舗ある飲食店フロア
老朽化が進み、再開発は免れない状況の「ニュー新橋ビル」
JR新橋駅西口からすぐの場所にそびえ立つ1971年開業のニュー新橋ビル。 「ひと言でいえばカオスな場所」と港区商店会連合会・副会長の富成昭英氏が言うように、地上11階、地下4階の同ビルには、飲食店やマッサージ店、さらには住居などあらゆるものが… “サラリーマンのオアシス”と呼ばれ、行列ができる洋食店「むさしや」やチケットショップなど300店舗以上が集結している。 そんな同ビルに再開発の話が浮上したのは’12年頃からだ。 「一番の問題は配水管。毎日少なくとも3軒ほどの店舗で水漏れしている」とニュー新橋ビル管理組合・理事長の田中潤氏は話す。 老朽化が進み、再開発は免れない状況だ。’16年には新橋駅西口地区市街地再開発準備組合を発足。’23年中には解体されるとの噂もあった。 しかし今もなおそこに存在し続けている。現状はどうなっているのか。
「一刻も早く再開発を進めたい」、しかし先が長い再開発
「解体予定は、あくまで世間の噂話。現実は4~5年後に解体され、’32年頃に再開発完了予定です」(田中氏) ニュー新橋ビル商店連合会・連合会長の長尾哲治氏は「ニュー新橋ビルの地権者だけでも316人いるので、再開発の同意を得るだけでも大変だった」と振り返る。 「一刻も早く再開発を進めたい」と語るが、地権者たちに実際にどんな建物でどれくらいの区分が所有できるかなどの素案を作り、新たに同意を得てから本組合発足に至るなど、まだまだ先は長い。
“新橋らしさ”は消したくない
「50年以上も経過したビルで商売を続けていくには、設備的に限界が近づいています。ただ長い年月を経たからこその昭和感やレトロな“新橋らしさ”は消したくない」 古き良きものを残しつつも、「何もしなければ麻布台ヒルズなど再開発が進む他エリアに後れを取り負けてしまう。新規顧客を呼び込むためには、新しい取り組みが必要」とニュー新橋ビル商店連合会の長尾氏は変革を口にする。
“せんべろ街”のような雰囲気を残す再開発を
「飲食店をはじめ、ホテルや病院などが入った32階と35階建てのツインタワーを建設予定。その中には“せんべろ街”のような雰囲気を残そうと考えている」 西口と並行して新橋駅前ビル1・2号館をメインに東口の再開発計画があり、進展時は「新橋駅の回遊性を高めていきたい」と長尾氏は言う。 危機感と希望を持ちながら再開発の険しい道のりは続く。 取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/杉原洋平 図版/松崎芳則(ミューズグラフィック) ―[[せんべろ街が消える]の大問題]―
日刊SPA!