《アパホテル地面師事件》”100億”の資金を動かし暴力団との関係も噂された「大物地上げ屋」が”真相”を語る
今Netflixで話題の「地面師」...地主一家全員の死も珍しくなかった終戦直後、土地所有者になりすまし土地を売る彼らは、書類が焼失し役人の数も圧倒的に足りない主要都市を舞台に暗躍し始めた。そして80年がたった今では、さらに洗練された手口で次々と犯行を重ね、警察組織や不動産業界を翻弄している。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 そのNetflix「地面師たち」の主要な参考文献となったのが、ノンフィクション作家・森功氏の著書『地面師』だ。小説とは違う、すべて本当にあった話で構成されるノンフィクションだけに、その内容はリアルで緊張感に満ちている。 同書より、時にドラマより恐ろしい、本物の地面師たちの最新手口をお届けしよう。 『地面師』連載第51回 『中間業者を二枚も噛ませる周到な手口で行われた赤坂・溜池の「アパホテル」地面師事件...逮捕された中間業者の「弁明」とは』より続く
横浜港復興のシンボルを地上げ
クレオスの白根が一躍不動産業界で知られるようになったのは、横浜の「バンドホテル」(BUND HOTEL)跡地の地上げだとされる。 関東大震災で甚大な被害を受けた横浜港復興のシンボルとして1929(昭和4)年、現在の山下埠頭の近くに建てられた木造2階建ての洋館のクラシックホテルだ。バンドとは海岸通りを意味し、ホテルからはロマンチックな港の景色を望む。 淡谷のり子のヒット曲「別れのブルース」や五木ひろしの「よこはま・たそがれ」の舞台となり、いしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」のブルーとは、館内のナイトクラブ「シェルルーム」の青いネオンサインをモチーフにしたと伝えられる。60年公開の日活映画「霧笛が俺を呼んでいる」のロケ地として知られ、石原裕次郎をはじめ、往年の大スターが定宿とした。 旧館のライブハウス「シェルガーデン」では、若かりし頃の桑田佳祐も出演し、評判を呼んだが、99年5月には閉館する。そのバンドホテル跡地の争奪戦に参加したのが、クレオスの白根だ。量販店「ドン・キホーテ」の山下公園店となった(現在は閉店)その地上げをしたという。 「すでにこの頃、白根さんは有名でした。といっても、内田マイクや北田文明なんかの地面師とは違う。地上げ屋として知られてきた。動かす資金も、50億から100億といわれていました。いわゆる地面師とは一線を画す不動産ブローカーであり、その白根さんがアパの件で絡んでいるとは意外でした。ただ、(元山口組系)後藤組の持っていた代々木の真珠宮ビルの地上げでも、彼の名前が取り沙汰されていたので、そのあたりから地面師たちと接点があったのかもしれませんね」 そう話す業界の事情通もいる。地上げ業者として名高い白根は、アンダーグラウンドの世界に通じている半面、大手企業との付き合いも多い。大規模な不動産開発を計画する大手の資金提供企業がうしろに控えているからこそ、地上げの世界で名を馳せてきたのだそうだ。白根にとっては、アパも取引先の一つだったのだろう。
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