マルク・マルケス

　MotoGPで8度チャンピオンに輝いているマルク・マルケスは、2025年にドゥカティのファクトリーチームへと加入することになった。そして、この決断によってドゥカティは母国イタリアで賛否両論の反応にさらされている。 　ドゥカティは2025年シーズンに向けて、エネア・バスティアニーニの後任に代わるライダーを探す必要があったが、当初はホルヘ・マルティン（プラマック）が選ばれることになるのではないかと見られていた。 　これはマルティンをファクトリーチームへ迎え、現在グレシーニから参戦するマルケスにはプラマックでファクトリーマシンを与えることで、ドゥカティ陣営の強力なライダーを逃すことなく抱え込む策だった。 　しかしマルケスはプラマック移籍を完全に拒否。そのことで事態は急転し、ドゥカティはマルケスをファクトリーチームへ昇格させることとなった。 　マルケスのファクトリー昇格は、マーケティング面でも、かつ競争力の面でもチームとしては申し分ないはずだ。しかし、この決断によってドゥカティはマルティンという有力ライダーをアプリリアへと流出させ、さらにプラマックもヤマハ陣営に移るという大きな犠牲を支払うことになった。 　ドメニカリCEOは、ドゥカティの選択が世間で全面的に支持されているわけではないと認識している。マルティンは2021年のMotoGPクラス昇格以来、実力を示してきたにもかかわらず、ドゥカティから見放される形となったことなどから、ドゥカティは批判を浴びている部分があるのだ。 「ホルヘのことは非常に好ましく思っていたため、これは我々にとっても非常に難しい選択だった」と、ドメニカリCEOは言う。 「ホルヘを選ぶか、それともマルクを選ぶかだった。ホルヘは長い間我々と共に進んできて、非常に強力なライダーだった。とても難しい選択だったよ。これが正しい選択だったのか、そうでないのかは、時が教えてくれるだろう」 「マルクを選んだことについてはかなり賛否両論で、過去の歴史や、以前起きたことからイタリアではその他の地域よりもさらに凄いことになっている」 「私が知っている限り、誰も彼の才能に文句はつけていない。しかし彼の“歴史”については、とても特徴的な意見を持っている人もいるようだ」 　来年は前述のマルティンとプラマックの流出、そしてバスティアニーニもテック3KTMへ移籍し、ドゥカティの強力なライバルになってくる。ドメニカリCEOは、一連のライダーシャッフルによって、ドゥカティがライバルを強化することになってしまったのではと訊かれたが、こう答えていた。 「ライダー、バイク、そして技術が必要という意味で、我々はそうならないことを望んでいる」 「エネルギーを上手く分配する必要があるんだ」 　なおドゥカティは現在、MotoGPプロジェクトに対して厳しい予算管理を行なっている。ライダーを引き止めるためにもそれに見合う契約金などは重要だが、ドメニカリCEOはバランスを取らなくてはならないと強調した。 「持続可能性という一般的な問題もある。これは私見だが、いくつかのメーカーは持続不可能な選択をしていると思う」 「我々は会社、レース、イタリアの家族が一体となるように最新の注意を払っている。バイクの開発にかかる費用とライダーに費やす必要、そのバランスを取らなくてはならない」