フェラーリにダラーラ、そしてトヨタも仲間に。ハースF1小松礼雄代表、今後の共同開発体制を説明「マラネロ風洞を使い続ける」
10月11日(金)、ハースF1とトヨタ/TOYOTA GAZOO Racing(TGR)はテクニカルパートナーシップを締結したと発表。ハースはドイツ・ケルンにあるTGR-Europeのインフラを活用していくことになった。 【ギャラリー:美しきF1マシン】F1に”帰ってくる”トヨタ……かつて勝利まであと一歩まで迫った:トヨタTF109 トヨタとの協業についてハースでチーム代表を務める小松礼雄は、既存の技術提携を強化するモノだと説明した。 アウトソーシングを活かしてコンパクトなチーム運営モデルを採るハースは、2016年の参戦開始から一貫して、技術提携を結ぶフェラーリからパワーユニット(PU)の他、譲渡可能パーツ(トランスファラブルコンポーネント/TRC)であるギヤボックスやリヤサスペンションなどを購入。先日2028年までフェラーリとの技術提携を継続すると発表したばかりだ。 またハースはフェラーリの本拠地があるイタリア・マラネロに、2020年末から“ハース・ハブ”と呼ばれるデザインオフィスを設置。空力担当が駐在し、風洞試験もマラネロで実施してきた。 このようにフェラーリと強い繋がりを持つハースに対して、トヨタは既存のインフラやリソースを武器に設計、技術、製造の面でサポートを行なっていくと説明した。 カギを握るのは、2002年から2009年にかけてトヨタがF1に参戦していた頃にチーム拠点として使用されてきたTGR-Europe(元TOYOTA GAZOO Racing Europe GmbH)。昨年までマクラーレンが風洞を間借りしていたり、新規F1参戦を目指すアンドレッティがスケールモデルを初めて空力テストしたりと、F1でも高い実績を持つ施設だ。 ただ、その風洞に関しては継続してハースはフェラーリからの借用を続けるようだ。 ハースはTGR-Europeの風洞を使うことになるのか? また自前でギヤボックスを製造する計画はあるか? と聞かれた小松代表は次のように答えた。 「率直に言うと、我々はマラネロの風洞を使い続けます。独自のギヤボックスに関しても、技術規則がフェラーリからのギヤボックス購入権を認めている限りは考えていません」 「明確にしておくと、トヨタとのパートナーシップは、フェラーリとの提携に取って代わるモノではありません。フェラーリとのパートナーシップは基盤であり常に変わりません。このパートナーシップはそこから奪い去るモノではなく、フェラーリとのパートナーシップを強化するモノです」 「フェラーリから得られるモノは素晴らしいです。トヨタやTGRが貢献してくれるのは、それ以外の部分です」 「もちろん、この話し合いの初期段階から、フェラーリ首脳陣とは完全に透明性を保っています。そのため、我々はTGRとそれぞれの会社の知的財産権をどのように保護する必要があるのか、どのような分野でどのような関わりを持つのかについて、明確な理解を得たとの報告を受けています」 また、ハースにとって重要なパートナーのひとつがイタリアの名門レーシングカーコンストラクターであるダラーラ。彼らはチーム発足時からシャシー製造を担当する他、フロントウイングをはじめとする空力パーツの製造も担っている。 小松代表は、フェラーリとならびダラーラもハースの重要なパートナーであり続けると説明した。 「ダラーラも我々の重要なパートナーです。彼らはスタートから我々と共におり、最初から我々のシャシーを製造してくれています。こちらも重要な関係です」と小松代表は言う。 「ダラーラとどのような条件で仕事を続け、どのような条件でトヨタと仕事をするかについていずれ話し合うことになると思いますが、我々は共存していきます。何かを取って替えるということではありません」 「デザインオフィスなどに関しては、もちろんマラネロの施設は維持します。フェラーリからギヤボックスやサスペンションを購入することに変わりはありませんからね。マラネロでの契約は理に適っています。また先程も言った通り我々はフェラーリの風洞を使い続けていますし、我々の空力担当は(マラネロ)駐在になります」 「例えば、カーボンコンポジットパーツの設計は我々自身で始めるつもりです。それに加えていくつかのテストやシミュレータ作業もやっていきます。マシンのパフォーマンスに貢献するような他の部分もあります」 「マラネロなのかイギリスなのか、具体的な場所はこれから決めていくことになります。ただ繰り返しになりますが、フェラーリに取って代わるモノではないと強調しておきます」 そして小松代表はこうも語った。 「我々はフェラーリからパーツを買い、ダラーラからもパーツを買います。例えばダラーラからフロントウイングを買えば、値段がついています」 「しかし今回はスポンサーシップも含まれています。例えばトヨタやTGRにフロントウイングを頼めば、PO(購買契約書)の交換があります。フロントウイングの支払いをすることになりますが、それはスポンサー料から捻出されます。ダラーラにフロントウイングを作ってもらう場合は、ジーン(ハース/チームオーナー)が支払う必要があります」 「資金の出どころは違いますが、仕組み自体は根本的に同じです。我々はそれほど(財務規則面では)複雑じゃないと考えています」 「周知の通り、フェラーリとはテクニカルパートナーシップ、PU供給、ギヤボックス供給などに関して2028年まで契約を結んでいます」 「私の関知する限り、基本的には何も変わりません。このパートナーシップはPUの面ではなんの関係もありません。我々の提携という点では、純粋にシャシー側の話です」
滑川寛, Jonathan Noble