岸川勝也氏 ソフトバンク打線牛耳ったDeNA・ケイの内角ツーシーム
◇SMBC日本シリーズ第4戦 DeNA5-0ソフトバンク(2024年10月30日 みずほペイペイD) 【岸川勝也 日本シリーズ大分析】ソフトバンクが王手をかけるか、それともDeNAが連勝して2勝2敗のタイに戻すか。シリーズの行方を大きく左右する第4戦で、本紙評論家の岸川勝也氏(59)が注目したのはDeNAの先発ケイVSソフトバンク打線。左腕に左打者を6人並べた変則オーダーだったが、初対戦のケイは7回無失点と機能させなかった。その投球を徹底分析した。 ≪左6人並べられても問題なし≫DeNAは先発・ケイの好投が最大の勝因だ。特にソフトバンク打線との初回の攻防に注目していた。第3戦の先発・東と同じ左腕。それでも小久保監督は、スタメンの左打者を前日から4→6人に増やした。特に初回は柳田から栗原の1~3番が全て左打者。結果は3者連続三振で、この日の試合の流れをつくったと言っていい。 ケイは今季、対右打者の被打率.252に対して対左打者は.261。どちらが得意、苦手とは数字には表れていない。右打者への武器は内角に食い込む140キロ台中盤のカットボール。膝元へ変化するスライダーもあり、外角にはチェンジアップを落とすなど多彩だ。ただ、この日は左打者へのある球種が威力を発揮した。150キロ超のツーシームだ。 初回、柳田は2球目、周東には3球目に内角に食い込むツーシームを投げ込んでファウル。最後は外角スライダーと、対角線を広く使って空振り三振を奪った。左対左で内角へのツーシームは効く。非常に邪魔になる球種だし、栗原はこのツーシームで空振り三振に仕留めた。カウントを稼ぐことも、決め球にもできる。16日の巨人とのファイナルS第1戦で6回1安打無失点。その投球を見て、ソフトバンク打線は苦戦すると思っていた。 打順の2回り目。4回に先頭・柳田に初安打を許しても非常に冷静だった。足を高く上げて、本塁に投げると思わせて一塁にけん制を投げたり、逆に足を上げずにぴゅっとホームに投げる。それでなくても直球に押されていたソフトバンクの打者は、これで始動が合わずに狂わされた。文句のつけようのない投球だった。 ≪ソフトバンク 連夜の弱点露呈…経験少ない救援崩れる≫ソフトバンクは前日に続いて弱点が顔を出した。松本裕、藤井と勝ちパターンの2人を欠くリリーフ陣。この日は0―1の6回2死一塁で2番手・尾形がマウンドへ。先発・石川が本塁打を含む2安打を許していたオースティンを空振り三振に仕留めたが、回をまたいだ7回につかまった。 尾形は確かに直球は速いが、細かい制球力がないために直球狙いで1、2の3で待たれやすい。7回先頭の宮崎に1ボールからの2球目、153キロを完璧に捉えられて一発を被弾。その後の1死満塁では岩井がマウンドに上がったが、ルーキーには酷な場面だった。 第1戦は先発・有原が7回、第2戦はモイネロが6回2/3と長いイニングを投げた。そこから8回にヘルナンデス、9回に守護神オスナと、ほぼ他の投手を介さずにつなぐことができた。しかし第3戦はスチュワートが4回で降板。2番手・大津が失点した。対するDeNAは伊勢に中川颯、坂本、山崎、森原らバラエティーに富んだメンバーがそろっている。終盤勝負でも試合を優位に運べるだろう。 ≪DeNAは牧&宮崎 ソフトバンクは栗原&山川 両チームとも主軸が鍵≫これで2勝2敗。勢いはDeNAにあるが、ソフトバンクは本拠地で5戦目を戦えるとあって、まさに五分五分か。ここまで来たら意外なヒーローを期待するのではなく、主力打者がいかに結果を残すかが鍵となる。 DeNAは1番の桑原と4番のオースティンが好調。この間を打つ牧が復調するかが得点力に直結する。ここまで17打数2安打の打率.118。また、この日三浦監督は5番・宮崎と7番・佐野の間に6番打者として梶原を入れた。前日は宮崎、佐野の2人を6、7番で並べたがともに無安打。調子の上がらない2人を並べて打線が切れるより、シリーズで打率3割超の梶原を間に入れてワンクッションを置く。プレッシャーが軽減されたのか宮崎は7回に貴重な本塁打。牧、宮崎の状態が上がればDeNAは大いに有利になる。 短期決戦。打線にはとにかく状態のいい打者を並べることも大切だ。ソフトバンクは5番・近藤の前を打つ栗原、山川の2人のバットがチームの浮沈を握っている。 ▼ソフトバンク・小久保監督(左腕ケイに左打者6人並べた理由を問われ)右の方が対応が難しいとの判断です。