服脱ぐ候補者も 過激な政見放送はなぜ止められないのか 過去に放送カットで訴訟の例
政見放送の品位はどこまで低下するのか。この夏の東京都知事選では、候補者が服を脱ぐ過激な政見放送がテレビを通じてお茶の間に流れ、物議を醸した。実は、候補者と無関係な人が巻き込まれ、ストレスにさらされたことはあまり知られていない。だが、こうした「やりたい放題」を止めることは難しいという。なぜなのか。 【写真まとめ】衆院選に出馬しなかった前議員ら
机に寝そべる候補者も
「あー、暑いね。緊張で。暑くて、困っちゃうわ」。カメラの前で、一人の若い女性が突然、シャツを脱ぎだした。胸元を強調するような姿になり、カメラを見つめながら首をかしげる――。 これは、7月に投開票された都知事選に立候補した人物の政見放送だ。 候補者の意見を伝えるための政見放送では、過去の他の選挙でも奇抜なパフォーマンスが行われ、たびたび話題となってきた。スーパーマンの服装をして「スマイルしてますか?」とポーズを取ったり、公開プロポーズをしたり……。2022年参院選では当時のNHK党の政見放送に、比例代表で立候補した「暴露系ユーチューバー」のガーシー(本名・東谷義和)氏が登場。芸能界の悪事を暴露すると宣言した。 だが、過去最多の56人が立候補した都知事選は、「品位」という意味ではレベルが違った。服を脱いだ女性の他にも、1分間笑い続けたり、机の上に寝そべったりする候補もいた。
法律は「そのまま放送」と規定
こうした奇抜な政見放送は、なぜ流せるのか。 まず、政見放送は衆院選や参院選、都道府県知事選挙で放送されるものだ。公職選挙法で「選挙運動」の一つと定められ、テレビとラジオで流せる。費用は公費で賄われるため、候補者や政党は無料で自らの政見を公共の電波で発信することができる。 そして公職選挙法は、候補者や政党が録音・録画したものを、放送局が「そのまま」放送しなければならないと定めている。公職選挙法は同時に、候補者や政党は「品位を損なう言動をしてはならない」と規定しているものの、放送局は基本的にそのまま流しているのが現状だ。