「藍」のように未来へ花開け SAGA久光スプリングスの18歳ルーキー高橋葵 度胸満点のSVリーグデビュー 「守備の人」がサーブでも躍動
バレーボールの新リーグ「大同生命SVリーグ」女子でSAGA久光スプリングスが開幕2連勝の好スタートを切った。13、14日に久留米アリーナ(福岡県久留米市)で行われたKUROBEアクアフェアリーズ戦ではグレタ・ザックマリー(32)とステファニー・サムディ(26)の外国人アタッカーコンビが得点源となり、ミドルブロッカーの渡邊彩(33)もスピードを生かしたアタックとブロックで躍動した。会場を沸かせた新加入選手の中でもう一人忘れてはいけないのが高卒新人の高橋葵(18)だ。勝負強いサーブとレシーブで酒井新悟監督(55)をうならせた。【#OTTOバレー情報】 ■高いサーブ力発揮、リリーフサーバーでポイント【写真】 SAGA久光は2試合で計13本のサービスエースを決めた。そのうちの1本は高橋の右手から生まれた。2セットダウンから劇的な逆転勝ちを収めた14日の第2戦、第4セットの16―14の場面。リリーフサーバーで登場し、自ら貴重なポイントを挙げた。これがSVリーグでの記念すべき初得点となった。 ポジションはリベロながら、チームには日本を代表する実力者の西村弥菜美(24)がおり、今は守備固めで各セットの途中からコートに入るレシーバーとしての役回りを担う。その高橋がなぜサーブも打つのか―。SVリーグ開幕前の国民スポーツ大会(国スポ)でも披露した起用法の意図を酒井監督が明かした。 「レシーバーで使うことは高橋本人にも伝えていますが、彼女はサーブも得意なんです。ですから、ローテーションで(後衛に下がる)ミドル(ブロッカー)がサーブを打つタイミングで起用し、ブレーク(連続得点)を取りにいこうという狙いです」。開幕節の2試合で計9本のサーブを打ち、レシーブを崩して相手の攻撃を単調にした。堂々としたプレーに酒井監督も「何と言っても度胸がある。高卒1年目であれだけ打てるのは素晴らしい」と賛辞を惜しまなかった。 大分・東九州龍谷高では堅実な守備を買われてリベロでプレーしたほか、アタッカーとしての経験もある。そんな高橋は以前から「レシーバーの方が好きです」と口にしてきた。非凡なボールコントロール能力に加え、最大のストロングポイントはメンタル。高校時代の恩師でもある相原昇監督(56)は同じ教え子の西村と比較して「勝負強さは決して引けを取らない。統率力も持ち合わせている」と太鼓判を押す。 その「武器」はサーブだけでなく、本職のディフェンスでも随所で生かされた。一進一退のしびれる展開となった第2戦の最終第5セットは、笑顔を絶やさずに鼓舞するキャプテンのセッター栄絵里香(33)に勇気づけられるように、体を張ったサーブレシーブとディグ(スパイクレシーブ)で得点につなげた。 まだ「内定選手」の立場だった3月のVカップでデビューするなど着実に場数を踏んできた。正リベロを務めた5月の黒鷲旗全日本男女選抜大会では唇をかみしめた。接戦の末に敗れたデンソーエアリービーズとの準決勝、相手のアタックに苦しみ、最後はレフト側からの強打に右手で懸命に反応しながら、ボールを拾えきれずにゲームの幕を下ろしてしまった。 高橋は言い切る。「試合に出させてもらえるのは当たり前のことではありません。それは常に思っています。(チームの)弱みではなく、強みに変えられるようにやっていきたい」。パリ五輪代表で日本バレーボール界のスターでもある髙橋藍(23、サントリーサンバーズ大阪)と同じ「タカハシ」の姓を持つ18歳には覚悟も備わっている。悔しさを肥やしに、会場で浴びる歓声を日の光に、何より勝利の喜びを水にして、スプリングスの「葵(あおい)」が大きな花を咲かせる。(西口憲一)
西日本新聞社