8党首が「ネット党首討論」 アベノミクスの成果めぐり応酬
衆議院選の公示を12月2日に控え、「ネット党首討論」(ネット事業者7社「わっしょい!ネット選挙」主催)が29日夜、都内で開かれた。8党党首が「安倍政権2年間の評価」「経済政策」「安全保障」などをテーマに議論した。安倍首相が今回の総選挙の争点と位置づける経済政策「アベノミクス」では、その成果をめぐって与野党の見解が対立した。 自民党の安倍晋三総裁、民主党の海江田万里代表、維新の党の江田憲司共同代表、公明党の山口那津男代表、次世代の党の平沼赳夫党首、共産党の志位和夫委員長、生活の党の小沢一郎代表、社民党の吉田忠智党首が出席した。
■100万人の雇用が増えた?
安倍首相は「われわれは100万人の雇用を増やした」とアベノミクスの成果を主張した。有効求人倍率は過去最高水準で、賃金は2%以上アップ、ボーナスも7%上昇。正規社員も7~9月で10万人増加させたと述べた。また、GDPは1~3月期まで6四半期連続プラス成長を実現し、倒産件数も民主党時代より2割減ったとして「デフレ脱却には『3本の矢』しかない。『この道』しかない」と強調した。 それに対して、海江田代表は、国民の8割は景気回復の実感がないとして「アベノミクスは『期待外れ』だった」と批判。100万人増えたという雇用も「ほとんどが非正規社員。正規社員は9万人減っている」と強調した。また、2%アップした賃金についても「2%といっても一部の企業。中小企業の賃金は上がっていない」と指摘。円安はアベノミクスの副作用だとし、円安による倒産が3倍に増えたと述べた。 志位委員長も、アベノミクスは景気悪化と格差拡大をもたらしたと批判した。GDPが2期連続マイナス成長となったが、これは「消費税アップによる増税不況」と指摘。一部の大企業などは円安の恩恵に浴したが、庶民は物価高に苦しんでいると訴えた。賃金については「実質賃金は15か月連続のマイナス」、雇用も正社員は2年間で22万人減少したとして、「『この道』には先がない」と政策転換を訴えた。 吉田党首は、雇用の問題は「非正規労働者が増えたことが最大の原因」と指摘。有効求人倍率は1.1倍だが正社員の求人倍率は0.68倍だとし、「正社員を望む人たちを正社員にできるような政策誘導が必要」と述べた。また最低賃金を平均1000円以上の引き上げや消費税率を5%に戻すことを求めた。 山口代表は「さまざまな指標にこの2年間の取り組みのいい結果が現われてきている」と評価。野党から異論のある雇用改善については、リタイア時期を迎えた団塊の世代が非正規によって職をつなげているといい、「この部分の非正規が増えている。この実態を見る必要がある」と反論した。また、高卒大卒の内定率は増えているとして、若い世代はむしろ正規雇用の増加に寄与していると述べた。 平沼党首も「雇用も回復し給料も株価も上がった」とアベノミクスに一定の評価を与えた上で、「第3の矢の具体性がない。地方経済は疲弊している」と成長戦略を明確に打ち出すべきだと注文をつけた。また、消費税10%へのアップを先送りしたことは評価した。 江田共同代表は、アベノミクスの第1の矢である金融緩和は「カンフル剤」だと表現。「一瞬シャキッとするが、効き目が効いているうちに第2の矢、第3の矢を矢継ぎ早にやるべきだった」と対策の不十分さを指摘した。また、第2の矢の財政出動は公共事業によるバラマキだったと批判、第3の矢の規制改革も「岩盤規制を打ち砕くと言ったがそれができていない」と語った。 小沢代代表は、GDPの6割以上は個人消費が占めるため、「景気を良くしようとしたら個人の収入を増やして消費を拡大するしかない」と指摘。非正規社員は将来の身分保障がなく、収入も少ない点や、農村では米価が急落している実情を挙げ、「これでは消費は増えるわけがない」として、セーフティネットを構築した上で個人消費アップを目指す施策の必要性を訴えた。
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