【JAIA試乗会】フィアット・ドブロ ATでFFでディーゼル → 最高の車!
イタリアで見た異次元の走りをする配達業者、あいつはドブロに乗っていた
ドブロに乗り始めて10分が経過した。 ぐんぐんと地平の果てまで走っていけそうな頼りがいのある1.5L 直列4気筒、130馬力のターボ・ディーゼルに身を預けながら、この不思議な魅力をもつ車のことを考えていた。見晴らしが良く明るい車内。ぴたりと身体に馴染むシート。自然なステアリングの手応え。安心感に満ちた直進安定性。丸一日でも乗っていられそうな乗り心地。すべてに信頼感に溢れるフィールがあり、すべてに余計な演出がなく、そして乗りやすい。ほんの10分もあれば、10年連れ添った愛車のように運転できてしまう。 欧州で商用車として使われるドブロは、実直かつ親しみやすい車なのである。
海沿いのバイパスを流しながら、このフィーリングを実現する特別な仕掛けがどこにあるのか思いを巡らせた。パワートレーンはターボ・ディーゼルに8速AT。サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビーム。 普通以外の何ものでもない。
謎を解けないままバイパスを抜け、混雑した市街地に入った。全長4.4m、幅1.8m超のボディを持て余すはずもなくスイスイと街を泳いでいくが、ここで思い出したのは、数年前に個人旅行で訪れたイタリアのことだ。 あの日、レンタカーのフィアット500で田舎道を走っていた筆者は、配達用のバンに思い切りぶっちぎられたのであった。あれは旧型のフィアット・ドブロだった。ブラインドコーナーに信じられない速度で突っ込むドブロを追いかけ、500に鞭打ってみたが、ドブロはどんどん遠ざかり、やがて視界から消えた。 いま走らせている現行型ドブロも、あの日のドブロのように異次元の走りをするのだろうか? 市街地を離れたドブロは、裏山を巡るワインディングに入った。
全力で飼い主に尽くす雑種犬
走り屋漫画「頭文字D」には、ATでFFでディーゼルなんて車じゃない、サイテーだよ、と主張するキャラクターが登場する。 だが彼はドブロを知っているのだろうか? ATでFFでディーゼルの現行型ドブロは、あの日の旧型ドブロを思い出させる走りを見せてくれた。ステアフィールやペダルのタッチは自然そのもので扱いやすく、また高い重心にも関わらず車体がしっかり安定しているため、車を信頼してカーブに入っていけるのだ。日本では法が許さないが、これがイタリアの田舎道だったら高いスピードでブラインドコーナーに飛び込めるだろうし、日本の峠道であっても、たとえばAE85(ハチゴー。誤植ではない)には負ける気がしない。 特別なメカニズムは何もないが、走りの資質は特別そのものである。