新型コロナショックのJリーグが最大約300億円の大型融資枠を取りつけた舞台裏とは?
均等配分金や商品化権料などの合計となる前者は、現状の最新情報となる2018年度決算でJ1に4億8700万円、J2に1億6800万円、J3に3500万円が分割支給されているものを、希望クラブに一括で年度の早い段階に支給する。分配金の合計額は、今年度予算で151億6500万円が計上されている。 新設された後者は新型コロナウイルスの影響を被るクラブに対し、均等配分金を上限にして無担保、返済期間3年で特別に融資する。各クラブへの均等配分金はJ1が3億5000万円、J2が1億5000万円、J3が3000万円で、全クラブへ満額融資された場合は114億8000万円が必要となる。 流れが変わった、と思われたのは今月23日の臨時実行委員会だった。金融機関と大企業の間で急増していた、安定的な資金確保のための予防的措置でもあるコミットメントラインの設定を、各クラブの代表取締役や理事長らで構成される実行委員に対して村井チェアマンが明言した。 「現時点でリーグとして緊急的な借り入れをしなければならない、という状況にはありません。それでもコミットメントラインをしっかり設定して、必要なときに必要な資金を獲得できるように金融機関と交渉していきます。日本の企業の多くがこうした動きをしている最中だと思われるなかで、クラブとしても私たちリーグとしても、しっかりとした備えをしていく、と申し上げました」 ここで言及された「リーグとしての備え」が、何を意味しているのか。前述した2つの施策の原資のほとんどは経常収益計の69.6%を占める、202億9300万円が計上された公衆送信権料収益が負う。言うまでもなく2017年度からスタートした、スポーツチャンネルの『DAZN』を運営するイギリスのDAZN Groupと結んだ10年間、総額約2100億円の大型契約料の今年度分となる。 3度設定されては流れてきた公式戦の再開目標は、いま現在ではいったん白紙状態に戻されている。そして、予定通り来月6日に緊急事態宣言が解除された場合、ゼロベースに戻ったコンディションを再び上げていく準備期間をへて、再開は最短で6月13日になる青写真が描かれている。 しかし、日本野球機構(NPB)と共同で設立した新型コロナウイルス対策連絡会議で招いた、専門家チームの座長を務める東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染制御学)は、院内感染が多発している医療現場の状況などをあげて「緊急事態宣言が解除される状況にはなかなかない」と指摘する。 つまり、6月の再開は極めて難しくなる。今後は1カ月単位で再開のタイミングを探っていくため、村井チェアマンの言葉を借りれば、6月の次は「7月になるのか、8月になるのか、あるいはもっと深いところになるのかは、いまの段階で私の方から申し上げることができません」となる。