新型コロナショックのJリーグが最大約300億円の大型融資枠を取りつけた舞台裏とは?
予断を許さない状況が続くなかで気になるのがDAZN Groupとの契約となる。守秘義務があるゆえに詳細は語れないと繰り返してきた村井チェアマンだが、対象となる全リーグ戦の一定数が配信できない事態を迎えれば、契約料が減額となる可能性があると幾度となく報じられている。 現状ではJ1およびJ2リーグが開幕節を終えただけで、J3リーグは開幕を前にして中断・延期されている。時間の経過とともに残る1090試合をすべて開催できないリスクが高まってきたからこそ、DAZN Groupとの契約を踏まえて、救済資金の原資となる経常収益計をしっかりと確保する意味で、リーグとしてコミットメントラインを介して融資枠を確保したと見るのが自然だろう。 今月下旬を迎えて、1月決算のクラブが続々と定時株主総会を開催している。すでに新型コロナウイルスが2019年度決算に大きな影響を与え始めているなかで、J1の北海道コンサドーレ札幌やJ2のアルビレックス新潟、ファジアーノ岡山が現状のままでは秋口には資金がショートする事態に言及。J1の大分トリニータは地場の金融機関から融資を受ける準備を進めていると明らかにしている。 情報が開示された2005年度以降ではリーグ最多となる20億円超の赤字を計上するも、増資などで債務超過を免れたJ1のサガン鳥栖を運営する株式会社サガン・ドリームスの竹原稔代表取締役社長は、再開されても無観客試合が続く状況下ならば「他のJ1クラブよりも早い、と思っていただいたら、時期がおわかりだと思います」と夏場にも資金繰りが行き詰まる見通しにも言及している。 つまり、場合によっては「分配金の一括前倒し支給」や「リーグ戦安定開催融資規定の時限的特例措置」だけでは、クラブの経営資金が足りなくなる恐れすらある。事態がさらに悪化していくと踏まえた上でも、約300億円で設定されたコミットメントラインは、新型コロナウイルス禍に見舞われたJリーグおよびJクラブにおけるリスクマネジメントの役割を果たしていくことになる。 (文責・藤江直人/スポーツライター)