【神宮大会】東洋大姫路が初戦でコールド勝利 なぜ岡田監督は短期間で名門復活へ導けたのか
打力アップに力を入れて
高校野球は一発勝負。トーナメントを勝ち上がっていく上での鉄則は「守備、走塁、バント」だった。この基本スタンスは不変だが、「いかに点を取るか。打たないとアカン」と、履正社高を通じて打力アップに力を入れてきた。 今春から従来よりも飛ばないとされる、新基準の金属バットに完全移行された。岡田監督も「5〜10メートルは飛距離が出なくなった」と自覚しているが「監督就任当初から言ってきましたが、今のバットでも、何とか打てるチームを作りたい」という強い意欲がある。 「金属バットの機能に頼るのではなく、打撃技術を身につけていく。きちっと打てば、長打も出る。技術が伴って、レベルアップしていく」 聖光学院高との1回戦では猛打を、全国舞台で証明した。敵将・斎藤智也監督は「この秋の段階で、これだけ振れる。間違いなく全国トップレベル」と舌を巻いたほどである。裏付けがあった。岡田監督は「企業秘密ですから(苦笑)」と言いながらも、内情を明かしてくれた。 「打つべき球を振っている。打つべき球をしっかり打っている。投手のタイプによってルールづくりをしている。今日の先発投手はコントロールが良いので、アウトコースの真っすぐとスライダー。対応してうまく打てていました」 聖光学院高の先発左腕・大嶋哲平(2年)は「変化球を見極められ、ストライクゾーンを振ってくる。得意としていたものが、封じられた。対策も、チームとして徹底されている。東北大会では感じなかったことで、精神的にも追い込まれていた」と、相手の強力打線を振り返った。
変わらないポリシー
全国舞台で結果を残せたことは、岡田監督にとっても一つの達成感がある。 「日頃の練習から選手たちには『学習してほしい』と言っていますが、やってきたことが間違っていないと分かったのでは。技術アップには体力づくりが必要であることを実感したはず」 岡田監督には学校、時代が違っても、変わらないポリシーがある。人が野球をやるという精神である。「40年以上やっていると分かるんですが、人間的な成長がないと、技術は伸びない。野球がうまくなれば、学校の成績も上がっていく。相関関係にあるんですよね。マナー、モラルについては、厳しく指導しています」。 10分の取材の最後、岡田監督は恩師・梅谷氏について触れた。 「現役のとき、一度も褒めてもらったことがないんですよ(苦笑)。今日は、ちょっとは褒めてもらえますかね……」 明治神宮大会は、強豪復活への途中過程である。東洋大姫路高は1977年夏に全国制覇を遂げた実績があり、甲子園での結果が求められる学校だ。63歳の熱血漢・岡田監督は後輩である生徒たちと、一つひとつのステップを踏んでいる。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール