プーチンの神経を逆撫でしても...ロシアで命を狙われた反体制派のナワリヌイ氏が感銘を受けた、独メルケル元首相の「人間味あふれるはからい」
真のロシア愛国者「アレクセイ・ナワリヌイ」がプーチン独裁政治の闇を暴く『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』が、全世界で緊急同時出版された。1976年にモスクワ近郊で生まれたナワリヌイが目にしたのは、チェルノブイリ原発、アフガン侵攻、ソ連崩壊、上層部の汚職、そして「ウクライナ侵攻」だった。政治とカネ問題、超富裕層の富の独占、腐った老いぼれに国を支配される屈辱と憤怒。独裁政治の闇をメディアに発信し、大統領選にも出馬した彼は、やがて「プーチンが最も恐れる男」と評されるようになる。そして今年2月、彼を恐れた当局により獄中死を遂げた。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 そんなナワリヌイが死の間際に獄中で綴った世界的な話題作『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』より「本物のロシア愛国者の声」を一部抜粋、再編集してお届けする。 『PATRIOT プーチンを追い詰めた男 最後の手記』連載第14回 『「病室中を血まみれにしてでも起き上がりたい」…命を狙われ、リハビリに励む反体制派ナワリヌイ氏の「血の滲むような努力」と「希望」』より続く
待ちに待った退院
9月23日、1ヵ月以上の入院生活を送ったシャリテ病院を退院する日がやってきた。準備を整え、荷物をまとめ、初めて病衣から普段着に着替えた。退院は午後3時の予定だったが、担当医が最後にもう一度私のところに寄りたいので6時まで待ってほしいと告げられた。そうこうしているうちにドアが開き、担当医がやってきた。一緒についてきた女性には、うっすらと見覚えがある。 なんと、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)ではないか。これにはたまげた。もちろん、ベルリンへの転院を認めるようプーチンに迫るなど、私の命を救うためにご尽力いただいたことは以前から聞いていた。 握手をしたかったし、できることならハグもして思いを伝えたいのはやまやまだったのだが(毒殺未遂事件があってからしばらく感情が非常に高ぶりやすくなっていた)、自分はトレーニングパンツにTシャツというラフな姿。折り目正しいドイツの礼儀作法から見れば、とんでもなく無礼だし、調子にのるべきではないと自制したのである。 そして主にロシア政治について、1時間半ほど会談した。ロシア政治についてのメルケルの知識の豊富さには驚かされた。私たちの調査、とりわけシベリア地域での最新の調査に関しても実に詳しく把握していて、大いに感銘を受けた。
メルケル首相の電撃訪問
メルケルの電撃訪問は、非常に感動的な人間味あふれる計らいであると同時に、ツボを心得た政治的アピールでもあった。言うまでもなくプーチンの神経を逆なですることになった。別れ際に、尽力に心からの感謝の気持ちを伝えた。メルケルからは今後の計画を尋ねられた。できるだけ早くロシアに戻りたいと答えた。「急ぐことはないですよ」とメルケル。 だが、私は、すぐにでもモスクワに戻るという考えにこだわっていた。我が家で新年を祝いたかったのである。ユリアには制止された。「完全に回復するまで待ちましょう」 そこで、あと4ヵ月ドイツにとどまることにした。
アレクセイ・ナワリヌイ、斎藤 栄一郎
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