巨大なパルスガンを構え華奢な体でエイリアンに挑む『エイリアン:ロムルス』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、『エイリアン』(79)の“その後の物語“を描くサバイバル・スリラー、山中瑶子が監督&脚本、河合優実主演の青春ドラマ、ENBUゼミナール「シネマプロジェクト」第11弾の、監督のセンスが光る3本。 【写真を見る】宇宙ステーションに足を踏み入れた若者たちにエイリアンが襲いかかる!(『エイリアン:ロムルス』) ■リプリーのキャラクターは本作のレインに受け継がれている…『エイリアン:ロムルス』(公開中) シリーズ、スピンオフと一大ユニバースを形成している「エイリアン」最新作。採掘植民地で働くレイン(ケイリー・スピーニー)は惑星ユヴァーガに移住するため、仲間たちと廃棄された宇宙ステーションに潜入した。ところがそこはエイリアンの研究施設だった…。『エイリアン』(79)と聞いてまず思い浮かぶのがグロテスクなエイリアンの姿。圧倒的な攻撃力と生命力、繁殖力を持つ宇宙最強の捕食者は、デザインを含めその後のSF映画に多大な影響を及ぼした。 『エイリアン』の功績は宇宙最強生物だけではなく、彼らと死闘を繰り広げた女性航海士リプリー(シガニー・ウィーバー)を生みだしたことにもある。本作にもチラリと登場するノストロモ号のクルーだった彼女は、慣習や妥協を嫌うロジカルな思考の持ち主。強い意志や行動力を含め、理想のリーダーとしてハリウッド映画における女性像をアップデートした。そんなリプリーのキャラクターは本作のレインに受け継がれている。半人前の少女として登場した彼女は、エイリアンとの死闘のなかで覚醒。仲間を守るため、巨大なパルスガンを構え華奢な体でエイリアンに挑む熱い姿が描かれる。レインを演じているのは『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(10月4日公開)の駆け出し記者役で強烈な印象を残したケイリー・スピーニー。スリルとアクション、スペクタクルとエンタメ要素が盛り込まれた本作だが、レインの勇姿にもぜひ注目してほしい。(映画ライター・神武団四郎) ■現代を生きる若者たちの“生”と“恋愛”を生々しく映しだす…『ナミビアの砂漠』(公開中) 19歳のときの初監督作『あみこ』(17)が第68回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に史上最年少で招待され、その才能を高く評価された山中瑶子監督。そんな若き才能が、『あみこ』を観て衝撃を受け、山中作品への出演を熱望していた「不適切にもほどがある!」、『あんのこと』(24)などの河合優実を主演に迎えて放った本格的長編デビュー作『ナミビアの砂漠』。第77回カンヌ国際映画祭の国際映画批評家連盟賞も女性監督として最年少で受賞し、公開前から話題を集めている本作は、河合が演じるヒロインのカナと寛一郎、金子大地が扮した2人の男性の姿を通して、現代を生きる若者たちの“生”と“恋愛”を生々しく映しだしていく。 いや~それこそ冒頭のシーンから前のめりになる。横長ではなく正方形に近いスタンダードザイズの映像が街を歩くカナをとらえたと思ったら、ズームアップするスピードと連動するように、彼女は大股でずんずん進んでいくから嫌でも目が釘づけに。カナはその後も彼女にしか分からない言動をガンガン繰り返し、もう、どうにも目が離せない。料理をいつも作ってくれる優しい恋人ホンダ(寛一郎)の前ではだらだらと退屈な顔をしていて、女友だちの話も聞いているようで上の空。乗り換えた新しい恋人ハヤシ(金子)に対しても次第に不満を募らせ、取っ組み合いのケンカが耐えなくなる。自分勝手で感情的、怒りの沸点が低く、物を投げたり、暴力も厭わないカナ。いったいなにがそんなにイヤなのか?なににイライラしているのか? 男性の多くは振り回される2人の恋人たちの目線でカナの心理を探ろうとするだろうし、周りの誰かを重ね合わせるかもしれないけれど、言葉にできない彼女の気持ちも何となく分かるような気もする。そう、観る人によって、感じ方や捉え方が違うはず。そこが面白い。2人の才能がほとばしる本作は、観た人の心や価値観、いまの気分や精神状態を露わにするのかもしれない。(映画ライター・イソガイマサト) ■本来なら、やるせないはずだが、エピソードによっては笑ってしまう…『とりつくしま』(公開中) 人生が終わってしまった人々の前にとりつくしま係が現れ、モノとなって、大切な人の側で過ごせると説明する『とりつくしま』。作家、歌人である東直子が書いた同名小説を娘の東かほり監督が映画化。交通事故にあった女性が夫の大好きだったトリケラトブスのマグカップにとりつくも夫の前に新たな女性が現れる「トリケラトプス」。小さな男の子が大好きな公園でママやお友だちを待ち続ける「あおいの」。孫の見るものが見たいとプレゼントしたカメラにとりついたものの、カメラは見知らぬ老人の手に渡っていた「カメラ」。ピッチャーとして活躍する息子の姿を一目見ようとロージンバックの白い粉にとりつき、あっという間に空に舞い散っていく母親の「ロージン」。 この世に未練がある人たちの話だけに、本来なら、やるせないはずだが、エピソードによっては笑ってしまう。叙情的な母の原作に娘の監督がカラッとしたおかしみを加え、生きる上で、決して避けて通れない死に対して、「こんな世界もあるかも。あったら素敵だな」と思わせてくれる不思議な味わいになっている。(映画ライター・高山亜紀) 映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。 構成/サンクレイオ翼