最長安倍政権に見えた「強み」と「弱み」 2019年日本政治振り返り
2019年は、5月に天皇陛下が即位され、令和が始まった。7月の参院選では与党が勝利し、11月に安倍政権は歴代最長となった。一方で11月には「桜を見る会」問題が取り沙汰されるようになり、12月には自民党議員が収賄容疑で逮捕された。一連の出来事を、安倍政権の「強み」と「弱み」という観点から振り返ってみたい。(東京大学大学院教授・内山融) 【年表】竹下氏から安倍氏まで……「平成の歴代首相」
●参院選で与党が勝利
7月21日に行われた参議院選挙では、改選議席(124議席)のうち自民党が57議席、公明党が14議席と合わせて71議席を獲得した。野党は、立憲民主党が17議席を得て大きく伸びた一方で、国民民主党は6議席と選挙前から減らした。総じて言えば与党の勝利といえるが、その理由として考えられるのは以下の通りである。
第1に安倍政権への支持率の高さである。参院選の前後、内閣支持率は40%台を維持していた。安定感があり経済も好調であることがその大きな要因であると考えられる。予算委員会が4月以降開かれず、野党が見せ場を与えられなかったことも政権に有利に働いたであろう。 第2に野党の分裂である。1人区では野党候補の一本化が実現したものの、複数区では候補者調整は行われなかった。こうした分裂状況のため、有権者は安倍政権への有効な選択肢として野党を見ていなかったように思われる。 第3に個別の争点についてみると、10月に消費税率の10%への引き上げが予定されていたことや、選挙直前に「老後2000万円問題」(※1)が出てきたことから与党に不利となるかと思われたが、実際のところ消費税や年金といった争点は、有権者の判断に大きな影響を与えなかったようである。 消費増税については、軽減税率の導入や増税分を財源とした幼児教育の無償化が決まっており、ポイント還元などの景気対策も進んでいた。多くの有権者は年金問題に関心を持っていたようだが、野党側は有効な対案を提示することができず、争点化に失敗したと考えられる。 (※1)「老後2000万円問題」…年金だけでは老後の資金として2000万円が足りなくなるという金融庁の報告が明らかとなった問題。