トヨタが初日首位スタート。2台ともに順調も「前回とは路面が変わっている」と小林可夢偉が警戒/WECサンパウロ
7月12日(金)、ブラジル・サンパウロのアウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ(インテルラゴス)で開催されるWEC世界耐久選手権第5戦『サンパウロ6時間レース』のフリープラクティスがスタート。TOYOTA GAZOO Racing(TGR)の2台のGR010ハイブリッドはFP2でこの日の最速および2番手タイムを記録し、初日をワン・ツーで終えている。 【写真】左回りのインテルラゴスに合わせて給油口を左側に装備したトヨタGR010ハイブリッド TGRが優勝を争い、最後まで緊迫した戦いとなったル・マン24時間レースからわずか4週間後、舞台は南米へと移り、チームはレースへ向けた準備を開始。19台のハイパーカーによるエキサイティングなバトルが予想されるなか、初日から非常に接近したセッションで好調を見せている。 ■気温上昇のFP2で予選パフォーマンスを探る 大会最初の走行日となったこの日、WECのディフェンディングチャンピオンであるセバスチャン・ブエミ、ブレンドン・ハートレー、平川亮の8号車は、1分25秒727という最速タイムをマークした。 そして自転車転倒事故の負傷によりル・マンを欠場していたマイク・コンウェイは、ル・マン24時間で2位表彰台を獲得した小林可夢偉とニック・デ・フリースとともに7号車での戦いに復帰。7号車は僚友と0.033秒差の2番手タイムを記録している。 その背後には2台のフェラーリ499Pが僅差で続いており、初日からトップ4台が僅か0.049秒以内、トップ10も1秒以内に入る状況となっている。 今大会の舞台であるインテルラゴスは、トヨタにとってハイブリッド車両でWEC初勝利を挙げ、最初の世界チャンピオンを勝ち取ったサーキットだ。 インテルラゴスは、次戦のサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(アメリカ・オースティン)と同じく反時計回りのコースレイアウトを持つため、GR010ハイブリッドは初めて左側に給油口を装備した。ピットクルーは11日(木)、12日(金)とピット作業の練習に勤しみ、その速さを損なうことなくこの変更に対応している。 午前10時45分から始まったFP1は、セッションスタートの45分前に雨が降り、気温は16度と低いなか、全車がウエットタイヤを装着して走行を開始した。 デ・フリースと平川にとっては初のサーキットだが、ドライバー6名は全員、ブラジルへ発つ前にドイツ・ケルンのチーム本拠地でドライビングシミュレーターによる準備を進めており、FP1ではコースの習熟に加えてマシンセットアップも開始した。 セッション開始から40分を経たころ、路面コンディションが回復してきたことでスリックタイヤでの走行が可能になるが、LMGT3クラスのマシンがクラッシュしたことでセッションは赤旗中断となった。 このアクシデントで破損したバリアの修復のため、セッションは再開されることなくFP1は短縮終了。その時点でのタイムにより、このセッション8号車はブエミのタイムで4番手、7号車はコンウェイのタイムで8番手となっている。 午前中のセッションで得られたデータをもとに車両セットアップを調整したあと、予定よりも延長されることとなったFP2は、気温も22度に上がり、路面も乾いたコンディションで行われた。 2台はまず予選でのパフォーマンスを探るプログラムを開始し、序盤にコンウェイとブエミがマークしたタイムでトップ2を占めた。 8号車はブエミのタイムは、そのままこのFP2のファステストタイムとなり、7号車は一旦ライバルに更新されたがその後小林がタイムアップを果たし、最終的には2台がワン・ツーで初日を終えている。 チームは明日13日(土)のFP3までに車両セットアップとタイヤ戦略を最適化し、現地時間15時10分(日本時間14日(日)3時10分)の予選に臨む。決勝レースは14日(日)11時30分(日本時間23時30分)にスタートが切られる。WEC第5戦初日の走行を終えた6名のTGRドライバーのコメントは、以下のとおりだ。 ■「好成績のカギはロングランのペース」とブエミ ■小林可夢偉(チーム代表兼7号車ドライバー) 「ブラジルに戻ってくることができて嬉しいです。GR010ハイブリッドは2台ともにすべて順調で、良いスタートが切れました。前回レースをした時とはコース路面が変わっているので、これが今後どのように変化していくのか分析し、理解を深めていく必要があります」 「もう一回練習走行があるので、その機会を活かして予選、および決勝へ向けた車両の準備と戦略を立てていくことを進めます。ベストを尽くし、予選がどうなるのか見てみたいと思います」 ■マイク・コンウェイ(7号車) 「ふたたびGR010ハイブリッドのコクピットに戻ることができて本当に嬉しい。身体は大丈夫だと思っていたが、確証は持てなかった」 「実際に走ってみた感触は良く、自信を持ってこの週末へ臨むことができそうだ。若干痛みはあるが、問題はない。クルマの調子も良いので、次のセッションも楽しみだ」 ■ニック・デ・フリース(7号車) 「順調な一日だったと思う。初めてのコースだったが楽しめた。1周は短いが、とても特徴的なコースで、今日はタイヤのグリップが低いながらもコースを学ぶことができた」 「各車のレベルがかなり接近していて、そのようななかでも我々には競争力はあると思うが、とくにタイヤの面で、ロングランの時にどうなるのかを検証しなくてはならない。まだやるべきことはあるが、まず良いスタートが切れたと思う。次は予選でどこまで行けるかだね」 ■セバスチャン・ブエミ(8号車) 「久しぶりのブラジルでの初日は、最初に雨で、その後路面が乾くという、さまざまなコンディションになったが、狭いコースで多くの車両が走るなかでトップ2で終えられた」 「ハイパーカー間の争いは非常に僅差なので、最大限のパフォーマンスを引き出すとともに、重要なのはロングランのペースで、それが好成績へのキーとなるだろう。今日は多くの良いデータが得られたので、これからも作業を進めていこうと思う」 ■ブレンドン・ハートレー(8号車) 「良い一日だった。異なるタイヤコンパウンドをテストし、最初のセッションでは雨と赤旗により、車両セットアップはわずかな変更のみ行った。全体的に、チームとして2台ともに非常にスムーズなスタートが切れました」 「トップ2で初日を終えられたことは良かったが、争いは非常に僅差だ。これから夜を徹して作業を続け、すべてのデータと学んだことを見直す必要があるだろう」 ■平川亮(8号車) 「初日を終えて、良い調子だと思います。FP1のコンディションはトリッキーで、残念ながら赤旗により私は走る機会がありませんでした。しかし一転、午後のセッションでは多くの周回をこなすことができ、良いセッションとなりました」 「このコースを走ったのは今回が初めてですが、自信を持つことができました。コースが狭く、車両も多いので簡単ではありませんが、これまでのところは楽しんで走れています」 [オートスポーツweb 2024年07月13日]