選挙で“推し”がいない人に、政治家とケンカするほど対話した50代女性が伝えたいこと
政治家が私たちと「同じ言葉」で話さないと距離は縮まらない
――すぐに謝罪する政治家というのは珍しいですよね。 和田:でも、電話でまた40分ぐらいバトルしたんですけどね(笑)。最終的には「政治家はいつも小難しい話するけど、私たちのこと、全然わかってないよね」みたいなことを私が言って。 私はこれまでスーパーやコンビニ、パン屋さんなどでバイトしてきて、そういうエッセンシャルワークのバックヤードの会話が好きなんですね。荒っぽい言葉で魚屋さん、八百屋さんなどでかわされるような売り上げの話とか、生活に密着した紋切り型の会話には政治性とかそういうものはないけど、体温があって。そういう日々の仕事に汗かく人達の会話と、国会や永田町での発言が全然違う言葉に思えて、私の中では同じ日本語なのに、大きな違和感があるんですね。 ――確かに、国会などを見ていても、政治家の言葉は煙にまくためにわざと遠い言い回しにしているんじゃないかと思うことがあります。 和田:そうそう。それで、小川さんはそういうエッセンシャルワークで働く人たちのリアルな言葉とか聞いたことないだろ、みたいなことを言ったら、絶句されて。 やっぱりエリートが多いじゃないですか。そんなことないと彼らは言うんだろうけど。私がエッセンシャルワーカーとして働いてきた感覚と、彼らが当たり前に話していることとの差があまりにも大きくて、その差に気づかなければたぶん政治と私たちの距離はずっと遠いままだし、その距離は政治家が自分で縮めなきゃいけないと思うんですよ。 ただ、小川さんはそういう私のとりとめのない話をしっかり聞いてくれます、いつも。だいたい政治家はそんなこと、聞いてはくれないでしょう?
選挙で“推し”を選ぶために見るべきポイント
――ところで、衆議院議員選挙の投票日が10月27日に迫っています。でも、例えば地方自治体単位であれば、首長が変われば政治が変わる、暮らしが変わる実感が持てる例もありますが、国政はなかなか自分の1票の重みを実感しにくいですよね。 和田:誰を推したらいいかは正直、難しいですよね。でも、今は政治家も選挙のために珍しく“下界”に降りてきているから、直接会いに行けるじゃないですか。 ――下界に降りてきて、選挙期間だけ庶民のごはんを食べて親しみやすさをアピールする人も多いですよね。 和田:国会で見せる顔は怖いのに、選挙のポスターや選挙期間にSNSにアップする写真はすごい笑顔の人とか(笑)。でも、それだけ見ると、「優しそう」「笑顔が良い」なんて言って、騙されちゃう。だからこそ、日頃と選挙のときの作り込みのギャップを探すと面白いですよ。 例えば自分の選挙区の候補者について、国会動画などをTikTokとかで検索してみると、国会中に居眠りしていたり、動画を見て遊んでいたりする姿が見つかることもありますし。政治のこともよくわからないで投票するのか!って怒る人がいますが、あらゆることを網羅的に理解するなんて難しいですから。 ――しかも、公約だけはだいたいまっとうそうなことを言いますからね。 和田:そうそう。例えば与党議員が景気対策とか言っていると、「じゃあ、なんで今までやらなかったの?」と思うわけですよ。そんな中でも、私が一番オススメしたいのは、やっぱりリアルで街宣を見ること。リアルで見ると、人間は意外とわかりますから。 ――街宣ではどんなところをポイントに見ると良いでしょう。 和田:例えばマイクで喋っている人の周りにいる人を見る方が面白いこともあるんですよ。通行人に対して偉そうにしているとか、女性の候補なのに周りが全員中高年の男性とか、「あれ、周りの人たちとあまり仲良さそうじゃないな」とか、そこにその人の人間模様や人間ドラマが垣間見えることが結構あるので。 そういう人間ドラマを「見ちゃった」という面白さを知ると、ますます投票したい人がいないと思うこともあるんですけどね。ただ、友達や恋人に対して100%満足だと思える人がなかなかいないように、政治家も100%を求めたらなかなかいないですよね。