「時間結晶」ってなに? 未来のコンピューターに応用できるかも
独ドルトムント工科大が、40分持続する時間結晶の創出に成功しました。 これは従来の結晶の寿命の1000万倍。それだけでも大躍進なのに、もっと何時間も持続する時間結晶の創出も夢じゃないと、研究班は張り切っていますよ。
時間結晶って何?
「結晶」といえば、身近なところでは雪の結晶や食塩(塩化ナトリウムの結晶)が思い浮かびますよね。原子が一定の空間で、ピシッと規則正しく並んでいる状態をいいます。 これに対し「時間結晶(time crystal)」というのは、一定の時間と空間に低エネルギーで規則正しく並ぶ状態のこと。条件が変わったりの外的要因がなくても、ある時間が来ると、ふと我に返ったように解散する不思議な性質を持っています。その意味では、「時間対称性」(安定した状態の物質は時間が過ぎても変わらないという概念)を破る存在でもあります。
これまでの記録は数ミリ秒
2012年に提唱されたのが始まりで、ラボでいろいろ作り出されてきました。2022年6月に超低温の量子的状態で実現したボース=アインシュタイン凝縮においては、一定時間継続する時間結晶が報告されましたが、持続時間はほんの数ミリ秒でした。 それが一気に40分ですから、ざっと1000万倍に伸びた計算です。 成果はNature Physicsに掲載中。
どう実現したの?
使ったのは、半導体で知られるインジウムガリウムヒ素(三元合金)。 これに原子核スピン系で偏光レーザー光を当てて躍起させ、系内の原子核のスピンを偏極させたんですね。 するとインジウムガリウムヒ素から振動が起こり、これが「時間結晶に相当する」状態と判断されたのだといいます(同大プレスリリース)。
で、何に役立つの?
同大チームの論文には、「この種のハードがいずれは、小型で柔軟性の高いオンチップ周波数*のスタンダードになる」ことを視野に入れて研究に取り組んでいるとあります。 *編注:いまのコンピューターは、チップの中を流れる信号のタイミングを同期させるために、シリコン(ケイ素の結晶)や水晶(二酸化ケイ素の結晶)などを利用した周波数発振器を使っています。時間結晶は、シリコンなどを超える性能の発振器に応用できるかもしれません。 もっとも実験では、一部が「解けて」時間結晶状態が失われたので、完璧ではないですけどね。「この時間結晶の寿命は少なくとも数時間、事によるともっと長くなると結論付けていいだろう」と書かれていて、何やらすごそうです。 しっかし量子論レベルの話は、怒涛の専門用語で頭割れますね。シートベルト締め直さないと。 米Gizmodoにも「何回読んでもわからん」「これ読むまで自分は頭いいと思ってた」「へー初耳!ちょっと読んで頭に入れようと思ったけど秒速で挫折した」「量子のシートベルトはとっくの昔に締めてるし、締めてないともいえる」といった声が集まってます。シュレディンガーの猫かいな。 Source: TU Dortmund University
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