【裏側】知られざる東京消防庁「即応対処部隊」 能登半島地震の捜索活動支えた宿営地のリアル
■風呂なし、簡易ベッド…宿営地のリアル
宿営地にはこうした車両のほか、食事用や会議用のスペースとして張られたテントもあった。その隣には宿泊用のテントがずらりと並ぶ。25張りのテントが設置され、隊員たちはそこで寝泊まりをしているという。1つのテントに収容できる人数は最大6人。中を見せてもらうと、簡易的なベッドが並べて置かれていた。奥には暖房器具もあったが、それでも冷え込みは厳しく、活動の疲れが十分にとれないことは想像に難くなかった。
また、宿営地では入浴することができない。そのため、隊員の衛生環境を保つことが重要だった。対策の一つとして、宿営地の入り口に「デコンタミネーション」のエリアが設けられていた。「デコンタミネーション」とは「汚染を取り除く」という意味。ここではポリタンクの水を使って手洗い・うがいをすることに加え、泥まみれになった活動服を洗うこともできる。食事を取る前に汚れをしっかりと落とすことで、清潔さを保つだけではなく隊員の精神的なリフレッシュにも繋がっていたという。
■隊員に聞く、活動への思い
「被災地の消防隊員や団員が、自身も被災する中で懸命に活動を行っていた。我々はその支援に適切に応えられるように懸命に全力で活動していました」 そうふりかえるのは現場で東京都大隊長として指揮をとった東京消防庁・即応対処部隊の鈴木善幸総括部隊長。話を聞くと、活動は困難の連続だったという。
能登半島地震は土砂災害が多く、表面の土砂だけではなく山の一部が崩れてしまった場所も多かった。土砂の量が多く、掘削するのが困難な上、雨が降れば道がぬかるんだり掘削した地面に水溜まりができたりし、作業を阻んだ。
さらに、冬の北陸地方ならではの気候も活動を阻んだ。石川県では冬は湿った重い雪が多く降る特徴がある。雪が降り積もった道路では、亀裂などで段差が分かりにくい。そのため現場と宿営地の往復では、通常ならば1時間程度で行ける距離に2時間半以上の時間を要したこともあった。土砂崩れなどの現場でも崩れた山肌が雪に覆われてしまい、救助活動中に再び山が崩れてこないか監視することも難しく、危険と隣り合わせの環境だったという。 『とにかく自分たちにできる最大限を』、そんな思いが、隊員たちを毎日現場へと向かわせていたという。 東京消防庁は2月12日をもって隊員の派遣を終了した。しかし、石川県内ではいまだ7人の安否が分からず(2月29日現在)、捜索活動は続けられている。