【裏側】知られざる東京消防庁「即応対処部隊」 能登半島地震の捜索活動支えた宿営地のリアル
■宿営地へ…隊員の生活を支える特殊車両
東京消防庁は地震発生翌日の1月2日から、災害現場での救助救出活動を担う即応対処部隊の隊員らを中心に支援部隊を特別編成し、現地に派遣していた。主な活動場所は珠洲市や輪島市の土砂災害現場や火災現場で、派遣された隊員数はのべ1200人を超える。その隊員たちの宿営地は能登町の「やなぎだ植物公園」に設置されていた。珠洲市の現場まではおよそ17キロ、輪島市の現場まではおよそ20キロ離れた場所だ。 隊員たちはここを拠点に寝泊まりしていた。夜明けとともに車列を組んで出発し、現場では朝8時から午後4時半ごろまで活動を行っていた。1月22日、この公園を訪れると、東京消防庁だけではなく神奈川県や岐阜県など様々な地域から派遣された多くの消防隊が宿営地を設営していた。
許可を得て、東京消防庁が拠点にしている場所を訪ねると、活動を終え、つかの間の休息を取る隊員たちや、その活動を支える様々な特殊車両を見ることができた。
捜索・救助活動において要になるのが、車両の燃料だ。災害現場で燃料の調達はできない。そこで東京消防庁はおよそ1000リットルの軽油を積載可能で、ガソリンスタンドの役割を果たす燃料補給車を派遣した。宿営地に戻った車両はこの燃料補給車から給油を受け、翌日の活動に向かう。
このほか、近くに小さな川などがない山間部での火災や、災害時の消火用水の運搬に使われる「10トン水槽車」の姿もあった。いわば水槽付き消防車だ。能登半島地震では、輪島市でおよそ5万平方メートルが燃失する大規模火災が発生したが、当時、地元の消防は断水の影響で消火栓や防火水槽が使用できなかったという。消火用水が確保できないことは火災の拡大に直結するため、水槽車でポンプ車に水を供給し初期消火を行うことができていれば、とある隊員は話す。 また、マイクロバスをベースにした「補給車」の姿もあった。発電機能や給油機能を備え、簡易的だが温かい食事を作ることができるという。隊員たちは宿営地を離れて活動している間、食事はなかなか取ることができず、取れても栄養補助食品などの軽食だという。奥能登の捜索活動では最低気温が0度を下回ることもあった。凍えるような寒さの中で活動したのち、宿営地に戻って温かいものが食べられる。ある隊員は「それが本当に嬉しかった」と話し、士気の維持につながったと振り返る。