【裏側】知られざる東京消防庁「即応対処部隊」 能登半島地震の捜索活動支えた宿営地のリアル
元日に発生した能登半島地震では、地震翌日から全国の警察や消防、自衛隊が石川県に駆けつけ、懸命の捜索にあたった。今回現場で出会ったのは2020年に新設された東京消防庁の即応対処部隊。過酷な現場で、隊員の活動と士気を支えたものとは。
■危険と隣り合わせの現場…手作業で土砂をかき分け、特殊車両投入も
地震発生から3週間が経った1月22日。元日に最大震度6強を観測した石川県・珠洲市の土砂崩れ現場では東京消防庁の隊員らによる捜索が行われていた。そこにあったはずの住宅は土砂に押しつぶされ、ところどころに木材が見えるだけで、原形を全く留めていない。離れた場所から捜索の様子を撮影していたが、周辺では土の匂いが立ちこめる。雨が降ったり止んだりする不安定な天候のせいで足元はぬかるみ、隊員たちが一歩足を踏み入れると膝まで埋まってしまう様子が見えた。 ここ珠洲市では約半数の住宅が全壊。日本海側に面した珠洲市・仁江町では土砂崩れが発生し、正月を家族や親族12人で一緒に過ごしていた住宅を直撃した。12人のうち、最初の揺れで周囲の様子を見に外に出た40代の男性を除く11人が土砂にのみこまれた。男性の義理の兄とその子供の2人は近隣住民の手でその日に救助されたが、7人はその後遺体で発見され、男性の義理の両親にあたる60代の夫婦の安否が不明となっていた。 東京消防庁・即応対処部隊の隊員らは連日、その夫婦の捜索にあたっていた。スコップを使い、手作業で懸命に土砂を掘り起こす。水を含んだ土砂は重く、試行錯誤しながらの活動が続く。そうした中、「山崩れが発生する直前、車のそばで2人を見た」という目撃情報が寄せられたという。それを受け、隊員らはドローンや重機のほか、日本で初めて導入されたという土砂や泥水を吸い上げる「強力吸引車」も投入し、発見を急いだ。しかし、この日の捜索では、土砂に埋もれていた車を発見したものの、2人は見つからなかった。
その後も捜索は続き、およそ2週間後の2月6日に安否不明となっていた夫婦のうち60代の男性とみられる遺体が現場から発見され、その後女性の遺体も発見された。遺族の男性はNNNの取材に対し「良かったという言い方が良いのかわからないが、発見してもらって良かった」と話した。これで珠洲市の安否不明者は0人となった。