【米政権交代】 トランプ次期大統領、「国籍の出生地主義」廃止と連邦議会襲撃の暴徒への恩赦を誓う
アメリカのドナルド・トランプ次期大統領は、8日放送の米NBC番組で、両親が米国籍を持たなくても米国内で生まれた子供に自動的に国籍を与える「出生地主義」を、来年1月の大統領就任初日に廃止すると誓った。 「廃止しなければならない。こんなことはばかげている」と、トランプ次期大統領は米NBC番組「ミート・ザ・プレス」で語った。テレビ局のインタビューに応じるのは、11月の大統領選で勝利してから初めて。 出生地主義は合衆国憲法で規定されているため、廃止手続きには大きな障害がいくつか伴う。 6日収録されたインタビューの内容は多岐にわたり、トランプ次期大統領は2021年の連邦議会議事堂襲撃事件の暴徒たちに恩赦を与えると述べたほか、経済やエネルギー、移民問題を含む「多数の」大統領令を就任初日に出すと約束した。 また、アメリカで暮らす不法移民の大規模強制送還計画を行うと繰り返した。一方で、民主党と連携して、子供の時にアメリカに入国した移民を支援することを提案した。 来年1月20日の就任式後、ジョー・バイデン現大統領に対する司法省の捜査を求めるつもりはないとほのめかしつつ、議会襲撃事件を調査した議員たちを含む政敵の何人かについては収監されるべきだと述べた。 トランプ氏がバイデン氏に敗れた2020年大統領選をめぐっては、2021年1月にトランプ氏支持者らが、バイデン氏の勝利を認定する作業を妨害するために連邦議会を襲撃。この暴動に関与したとして数百人が有罪判決を受けた。彼らの恩赦を求めるかどうか質問されると、トランプ次期大統領はこう述べた。 「我々は個々のケースを検討するつもりだ」、「私は非常に迅速に行動するつもりだ」。 「(大統領就任)初日に行動する」と、次期大統領は付け加えた。 さらに、「ところで、彼らは何年もそこに入っている。不潔で最悪な場所にいるんだ。運営さえ許すべきではない場所だ」と続けた。 ■NATO残留や中絶、ウクライナ支援にも言及 トランプ次期大統領は、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)残留について、「もし(NATO加盟国)が(払うべきものを)払い、彼らが公平だと思えて、彼らが我々を公平に扱っていると私が思えば、もちろんNATOにとどまるという答えになる」と述べた。 中絶薬については、制限するつもりはないとしたが、それ保証できるか問われると、「まあ、そうなるよう取り組む。つまり(中略)状況は変わるので」と付け加えた。 ウクライナに対しては、自分がホワイトハウスに戻ったら同国への援助が減ることを予期しておいた方がいいかもしれないと語った。 小児用ワクチンが自閉症を引き起こすとの主張については、自閉症と小児用ワクチンの関連性を「誰かが突き止めなければならない」とした。トランプ次期大統領は、保健省長官に指名したロバート・F・ケネディ・ジュニア氏がこの問題を調査する可能性を示唆した。 米公的年金「ソーシャルセキュリティー」の削減や受給年齢の引き上げは行わないと、繰り返し約束し、「より効率的」なものにすると述べた。それ以上の詳細には言及しなかった。 アメリカの主要貿易相手国からの輸入品に関税を課す計画によって、国内の消費者物価が引き上がるのではないかと問われると、「私は何も保証できない。明日のことは保証できない」と述べた。 ■「出生地主義」を廃止に 移民問題については、両親が米国籍を持たなくても米国内で生まれた子供に自動的に国籍を与える、いわゆる「出生による市民権」を廃止する大統領令を発令するつもりだと述べた。 「出生による市民権」は、アメリカで「生まれた者は全員」「合衆国市民である」と定める合衆国憲法修正第14条に基づくもの。 トランプ次期大統領は、この慣行を廃止すると誓った。しかし、それを実現するには大きな法的ハードルに直面することになる。出生地主義を廃止しようとする大統領令は、即座に法廷で差し止められる可能性が高い。 憲法改正のハードルは極めて高い。上下両院で3分の2の承認が必要になるほか、4分の3の州議会が批准しなければ実現しない。 ■不法移民政策 インタビューの中で、次期大統領は、米国籍の家族を持つ不法移民を強制送還するという選挙公約を実行するとも述べた。 「私は家族をバラバラにしたくない。彼らを一緒に、全員送り返すことが、家族をバラバラにしなくてすむ唯一の方法だ」 オバマ政権時代の、幼少時に親に米国に連れて来られた不法移民を保護する制度(DACA)の下で保護されていた不法移民で、「ドリーマー」と呼ばれる子供たちを助けるために、議会と連携したいとも述べた。トランプ次期大統領はかつて、DACAを撤廃しようとしたことがある。 「私は民主党と連携して計画を立てる」とし、これらの移民の中には良い仕事を見つけてビジネスを始めた者もいると付け加えた。 ■政敵への報復は トランプ次期大統領は、自身の政敵に対する報復を求めると、繰り返し誓ってきた。これを実行に移すかどうかについて、次期大統領はあいまいな発言を繰り返した。 来年1月に退任するバイデン大統領は1日、刑事裁判2件で有罪となり、量刑言い渡しが今月予定されていた次男ハンター氏(54)について、恩赦を与えたと発表した。バイデン氏は退任前に、政界の盟友たちに包括的恩赦を与えることを検討しているとも報じられている。 トランプ次期大統領はかつて、バイデン氏とその家族について、特別検察官による捜査を求めるつもりだとしていた。しかしNBCに対しては、そのつもりはないとうかがわせる発言をした。 「過去に戻るつもりはない」、「私はこの国を成功させたい。報復は、成功によってなされるだろう」と次期大統領は述べた。 一方で、自分に対する捜査に関与した、かつて民主党主導だった下院委員会のメンバーは「刑務所に行くべきだ」とも語った。 委員会のメンバーだったリズ・チェイニー元下院議員(共和党)は8日、トランプ次期大統領に反論した。 委員会メンバーを投獄すべきとの次期大統領の発言は、「法の支配と共和国の基盤に対する、(次期大統領による)継続的な攻撃」だと述べた。 次期大統領はインタビューの中で、自分の敵に対する捜査を、連邦捜査局(FBI)に指示することはないとも述べた。 しかし、「連中が不正を働いたり、何か悪い事をしたり、法を破ったりしたら、おそらく指示するだろう」とした。 「連中は私を狙って、追い込んだ。私は何一つ悪い事をしていないのに」 (英語記事 Trump vows to end birthright citizenship and pardon US Capitol rioters)
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