テイラー・スウィフト、【The Eras Tour】最終公演の最高な瞬間ベスト10
「それはある時代(era)の終わりだったけれど、ある時代(age)の始まりでもあった」 テイラー・スウィフトが、世界中を巡った大ヒット・ツアー【The Eras Tour】の最終公演で歌った歌詞だ。現地時間2024年12月8日の夜にカナダ・バンクーバーのBCプレイス・スタジアムで開催されたコンサートのアコースティック・セットで、「Long Live」をピアノの弾き語りで披露した彼女はファン・サービスも忘れていなかった。鋭いリスナーは歌詞の不一致に気づき(正しい歌詞は”ある10年の終わり”だ)、変更箇所で歓声を上げた。それはその瞬間の重要性を示す、ささやかではあるが意味深い確認だった。 【The Eras Tour】は、その約2年間の開催期間中に、主要な発表やサプライズ出演者、大幅なセットリスト変更などがさまざまな公演で実施されてきたが、最終公演ではそのような衝撃的な出来事は何も起こらなかった。代わりにテイラーは、このツアーが成し遂げたすべてを称える機会として最終公演を位置づけた。それは、これまでに作られた最も驚くべきポップ・ショーの1つとして、また、何百万人ものスウィフティーズが集まり、絆を深め、声を合わせて歌い、自分たちが認められていると感じる場としてのものだ。テイラーはパフォーマンスの途中で観客に、「皆さんをこれ以上ないほど誇りに思っています」と語りかけた。その言葉を裏付けるかのように、彼女はスタッフと丹精込めて作り上げた、記録的な成功を収めるほど世界中で受け入れられた【The Eras Tour】のフィナーレを観客に披露した。 もちろん、最終公演ではセットリストの中に特別な要素をいくつか盛り込む必要があったため、バンクーバーの観客は抜群のアコースティック・セット、テイラー・スウィフトの心のこもったスピーチを複数回、そして最後の曲の後の感情のほとばしりを堪能することとなった。日曜夜の公演は、以前に見たことがある人にとっても注目に値するものだったが、初めての人にとっても、3時間以上続くスリル満点の興奮の連続だった。【The Eras Tour】の終了は、現代の音楽業界を代表するツアーのひとつが終了したことを意味するが、日曜夜のバンクーバーでは、いつもと同じ素晴らしいファン体験となった。 以下、【The Eras Tour】最終公演のベスト10の瞬間を時系列順に紹介しよう。 ◎グレイシー・エイブラムスの涙の別れ オープニング・セットの1曲目に、グレイシーは1枚の紙を取り出した。それは、【The Eras Tour】の一員として経験したことへの心からの感謝のスピーチだった。「まだ終わってほしくない」と、人気上昇中のポップ・スターはスタジアムの観衆に語り、「これは私が幸運にもオープニング・アクトを務める機会に恵まれたから言っているわけではありません。私が言っているのは、皆さんと同じように、テイラーの歌が、他の誰にも理解できないし知ることもないと思っていた、痛みや憧れ、愛、喪失感を抱いていた人生の一瞬と魔法のように出会いながら成長してきたからです。彼女は全部わかってくれていました」 その後、グレイシーはオープニング・セットの最後の曲の前に涙を拭い、バンド・メンバーとステージを降りる際も観客の喝采に包まれながらさらに涙を拭った。 ◎拍手を感じるための最初の中断 『フォークロア』のセットでは、予想どおりスタンディング・オベーションが沸き起こり、ファンが「ハッピー・バースデー」を歌ってテイラーの誕生日を祝ったことも拍車をかけた(彼女は12月13日に35歳になる)。しかし、最初の長い歓声は公演の最初のフル・ソング「Cruel Summer」の直後に起こり、彼女はファンの反応に特に感動した様子だった。【The Eras Tour】の最終公演が正式に始まり、BCプレイス・スタジアムは、スーパースターを応援し、一緒に歌い、盛り上がる準備ができていることを大いにアピールした。テイラーは、「今夜、私たちは最後にもう一度だけショーを演らせていただけるので……悔いが残らないようにします」と観客に語りかけた。 ◎「22」の帽子のプレゼントもこれが最後 【The Eras Tour】公演の定番である「22」の帽子は、ピンクのスパンコールがついたドレスを着た観客の幼い少女に贈られた。少女は憧れの人とハイタッチやハグができることにとても感激している様子だった。彼女の驚きの表情と、テイラーが彼女を抱きしめる姿は、このツアーの各公演で観客の琴線に触れる瞬間を一層盛り上げた。 ◎「All Too Well」前のスピーチ 『レッド』に収録されている10分間の壮大な物語を始める前に、テイラーは観客に語りかけ、【The Eras Tour】の意図をまとめ、この体験がスタジアム・スペクタクルをはるかに超えるものになった理由を説明した。 「このツアーの永続的なレガシーは、皆さんが喜びと連帯感と愛に満ちた空間を作り出したことです」と、彼女フレンドシップ・ブレスレットという現象と、彼女の歌詞の一節から生まれた社会活動について言及した。彼女は、「これがとても特別なのは、皆さんがいるからです。そして長い間ずっと支えてくれているからこそ、私は毎晩こうやって過去の思い出をたどることができるのです。なぜなら、皆さんが私の音楽活動のすべての時代を気にかけてくれたからです」と続けた。この言葉は、ファンが【The Eras Tour】の体験に不可欠な存在となったことを、そしてテイラーが自身のキャリア全体にわたるビジョンを実現できたことを如実に反映していた。 ◎「Delicate」のイントロ 年季の入ったスウィフティーなら誰しもが、ライブで「Delicate」のビートがドロップする前に観客が「1!2!3!レッツ・ゴー、ビッチ!」と叫ぶのは、2018年にネットで拡散されたファンの瞬間からすっかり毎晩の定番となったことを知っているだろう。この即興のチャントは、ツアーが進むにつれて大きくなり、最終日の夜には観客全員がこのチャントを叫ぶ準備をしていたようで、テイラー自身もセンター・ステージで観客と一緒にカウントしていた。「Delicate」に新たな伝説が生まれ、テイラーはそれを歓迎している。 ◎『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』の情熱 それが最近ゆえの先入観なのか、単に新曲の強さなのかは不明だが、『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』のコーナーはこの公演の中で最も気迫に溢れ、多岐に渡るショーケースとして際立っていた。テイラーは、見事な皮肉(「I Can Do It With a Broken Heart」)、死の行進に合わせた憤怒(「The Smallest Man Who Ever Lived」)、品の良い憂鬱(「Down Bad」)、無謀な対立(「Who's Afraid of Little Old Me?」)など、奔放な感情を披露した。この6曲のコーナーはスムーズに進行し、飛ばせるような瞬間はなく、「So High School 」ではベンチスタンドで友人と嘆き合ったり、「Fortnight 」で失われた愛に手を差し伸べたりと、テイラーがこの夜最も印象的な表情を見せた。 ◎華麗なるアコースティック1曲目…… 【The Eras Tour】最終公演のサプライズ・ソングに入る前に、テイラーは毎晩のアコースティック・パフォーマンスは自分なりに“毎晩想像をめぐらせて、皆さんが何を聴きたいかを考える”方法だと説明した。ツアー最終公演を目前にして、彼女は“今夜の気持ちを本当に凝縮している曲は何か”を考え、“原点に戻ることに決めました”と述べた。 こうして、2006年のセルフタイトル・デビュー・アルバムの中でも特に印象的な「A Place in This World」と、破れた夢の中で希望を見出すための頌歌として激しく愛されている「New Romantics」の素敵なギター・マッシュアップが始まった。これらの楽曲は、テイラーの芸術性の異なる瞬間から抜粋されたものだが堂々と融合され、自身のルーツを受け入れることで、変化の中を導いてもらうというメッセージとして伝わってくる。 ◎……そして2曲目のアコースティック・ソングのエモーショナルな衝撃 テイラーはギターを置き、ピアノの前に座り、ツアー最後のサプライズ・ソングでスタジアムを驚かせた。「Long Live」と「New Year’s Day」のマッシュアップで、前者の壮大なスケールと後者の静まり返った物悲しさが組み合わさった、胸に熱いものが込み上げてくるようなコンビネーションだ。そして彼女は、このマッシュアップのコーダとして「The Manuscript」を加えることで、ファンを称え、彼らが作り上げたコミュニティに感謝するという自身の意図を明確にした。「原稿を読み直したけど、物語はもう私のものじゃない」と彼女は歌い、感謝のしるしとしてこの3曲を捧げた後、万雷の拍手の中で2回に分けて一礼した。 ◎キャム・サンダースが最後にもう一度輝く 【The Eras Tour】でテイラーをサポートするダンス・クルー全員が、数か月間途切れることなく素晴らしいパフォーマンスを披露してきたが、サンダースはファンの人気者となり、最後の夜に観客の称賛を受けた。「We Are Never Ever Getting Back Together」のブリッジ部分の終わりにテイラーがマイクを彼に渡すと、サンダースは、「これで最後だからね!ノーだよ!」と叫んだ。そして「Bejeweled」の間、テイラーはパフォーマンスを中断してサンダースにハグをした。この短い抱擁は、彼とステージを共有できたことをどれほど感謝しているかを伝えるものだった。 ◎最後のグループ・ハグ 抱擁と言えば、【The Eras Tour】は世界共通で親密な瞬間をもって幕を閉じた。何千人ものファンが、パフォーマンスの終了時に紙吹雪が舞う中テイラーに声援を送り、彼女はダンサーたちの方を向き、全員をグループ・ハグで抱きしめて離さなかった。ステージに全員が揃う最後の機会に、誰もが目に見えて感情が溢れているようだった。 その後、テイラーはクルーのメンバーを一人一人ハグし、彼らとともにゆっくりとステージを降りた。観客からは依然として熱狂的な声援が送られていたが、ツアーを回る家族としての世界に浸っていた。彼女はバンドとクルーに感謝の意を表し、観客に最後の一礼をしたが、グループ・ハグがフィナーレを象徴し、最後の【The Eras Tour】公演を忘れられないものにする親密なイメージを印象づけた。