日米野球で勝ち越した侍Jは、本当にMLBに肩を並べたのか?
確かに単純な日米比較論議はできない。2017年のWBCを見据えた短期決戦での代表チームの力の差と見るのか。それとも日米の野球の技術、戦術、体力など、その質の差を見るのか。ここを混同しての比較論は誤解を招く。 与田氏は、短期決戦を念頭に置くならば、技術と体力、チーム戦術、戦略などすべてにおいて肩を並べているという。特にメジャーを凌駕するのが、その投手力だ。 「WBCで2回優勝していますから、その意味では、チーム力、スモールベースボールを軸としたキメの細かい戦術や機動力を使った野球は、すでにメジャーと肩を並べていますよね。加えて、今回、メジャーの公式球やメジャー仕様のマウンドに、たった数日で対応している日本の投手陣の適応能力の高さには驚かされました。また先発したマエケン、金子、則本、藤浪、今日途中から投げた武田にしても、ストレートは、150キロ前後、もしくは、150キロオーバーを平均して投げます。メジャーに対しては、ストレートはいくら速くとも関係ないと、言われますが、実は、そうではありません。やはりストレートがあってこそ変化球が生きますし、メジャーも速いボールに詰まることを嫌がります。そうなると変化球に効果が出るのです。その意味で日本は速いストレートとコントロールを兼ね備えた投手を十分に揃えることができるようになったと言えるんじゃないでしょうか。またメジャー相手には、ストライクゾーンとボールゾーンを中途半端に使わないことが必須条件になりますが、そのための集中力が非常に高いと思います」 ダルビッシュ、マー君、岩隈らが、現在もメジャーリーグのローテーションをエース、もしくは、エース格扱いで任されている。それらを例に、日本の野球がすべてにおいて「メジャーに肩を並べた」、「日本が越えた」とするのは暴論である。 与田氏も「レギュラーシーズンの試合数は日米で18試合しか違わないが、メジャーでは東西の移動や時差、球場ごとによる環境の変化など過酷な日程や環境でプレーをしなければならない。でも今の日本人プレーヤーが、1年を通じて、そこでコンディションを常に一定に保つことができるかどうか。メジャーの選手は平気です。彼らは、クオリティスタートと、トータルのイニング数を指標としますが、果たして金子やマエケンが、すぐに、そういう状況に適応してシーズンを通じて結果を出せる投手なのかどうか。例えが悪いかもしれませんが、アマチュアの選手をドラフトにかけるとき、プロの長いシーズンに耐えられるかどうかが課題になりますよね。日本から、メジャーにいくときは、それと同じくらいの壁が今なお残っているように感じます。そういうことの心配がいらないくらいの体力や逞しさを、どの選手も身につけてきたときに、本当の意味で、日米の野球が肩を並べたと評価していいのではないですか?」と見ている。 だが、考えてみれば、メジャーの本気度を推し量り、こういう議論が起きること自体が、日本の野球の進歩を証明しているのかもしれない。