【NBA Rakuten解説者インタビュー】佐々木クリスさん 「河村選手の成長スピードは本当に目覚ましいものがある」
河村選手の適応スピードは想像をはるかに超えている
――日本人選手では、河村勇輝選手(メンフィス・グリズリーズ)が今シーズンからNBAに挑戦しています。ここまでの活躍をどう見ていますか? 佐々木:河村選手は2ウェイ契約ながらも、NBAのコートで存在感を示しています。渡邊雄太選手も1年目は15試合程度、2年目でも18試合程度しか出場機会がなかったことを考えると、河村選手の成長スピードは本当に目覚ましいものがありますね。NBAのコート内外での文化、環境への適応力は想像をはるかに超えていますね。 ――ここまで期待以上の活躍をしている河村選手が、今後NBAの本契約を勝ち取るために必要なことは何でしょうか? 佐々木:河村選手は自身で「ホップ、ステップ、ジャンプ」という3か年計画を立てているそうです。1年目はGリーグ、2年目は2ウェイ、そして3年目に本契約。そのホップを飛び越えて2ウェイ契約を勝ち取ったわけですから、ある意味ここからは全てボーナスポイントだと思います。 Gリーグでは彼のスピードについていける選手はいませんし、アシストもGリーグでトップです。彼のコートビジョンは、NBAの中でも突出しています。その中でもNBA定着、本契約に向けては、ペイントアタックやペイント内での得点力が重要になってくると思います。 NBAでは193cmのガード選手や、ウイングスパンが210cmもあるフォワードの選手などとマッチアップすることがあります。Bリーグでは185cmのガード選手に対してシュートまで持ち込むことができていたのが、NBAの選手はより高い運動能力とサイズで対応してくるので、シュートを打つことすらままならない状況もあるでしょう。そこをどのように打開していくかが、今後の課題だと思いますね。 ――八村塁選手は、レイカーズで主力選手として定着しています。彼の活躍についてはどう見ていますか? 佐々木:河村選手が挑戦してくれたことで、NBAを見始めた日本のバスケットボールファンも増えたと思いますが、改めて日本のスターである八村選手が、まだ他の日本人選手が到達していないレベルで、安定して活躍しているのは素晴らしいことだと思います。 レイカーズのチーム事情もあり、35分、40分と出場する試合も珍しくなく、NBAのコートで長いプレイタイムを得られることは、バスケットボール選手にとって一番のKPIだと思います。それだけレイカーズからも期待されているでしょうし、彼のようにサイズとフィジカルを兼ね備えた選手は、ロスターにあまりいないので、彼が安定して、ディフェンスで成長できるかが、今のレイカーズの伸び代になっていると思います。 ――最近ではディフェンス面でのタスクが増えているように見えます。 佐々木:そうですね。相手の攻撃の起点となる選手に対するディフェンスの選択肢が少ないという状況から、八村選手をボールマンにつけ、オールスイッチで数的有利を与えないように守備をする、という戦術をJJ・レディックHCは採用するようになりました。 チーム全体のディフェンシブ・レーティングは大きく向上しているわけではありませんが、八村選手がそのようなディフェンスの戦術の一翼を担うというのは、非常に重要なことだと思います。スクリーンマネジメントや、より高いコミュニケーション能力が求められるタスクもこなしていくことで、八村選手はさらに成長していくでしょう。