北九州の台所「旦過市場」は本当に再生できるのか? 老朽化建物が続々解体、成功のカギを握る超重要な要因とは?
「修羅の国」の真実
この点を大切にすれば、旦過市場の再整備は北九州市の魅力を高めることになるだろう。北九州市は一見、製造業の衰退により活力を失ったように見えるが、そのポテンシャルは依然として高い。もともと門司市、小倉市、若松市、八幡市、戸畑市の5市が対等に合併して成立した経緯を持ち、それぞれの地域が独自の個性と魅力を備えている。 また、炭鉱や工場の発展と共に多くの人々を受け入れてきた歴史があり、 「外部からの来訪者に対して開放的」 で、福岡市以上に温かい歓迎がある。松本零士の出身地であることを生かした北九州市漫画ミュージアムや、松本清張記念館など、文化的なレベルも意外に高い。 他にも、定額で朝まで飲み放題・歌い放題のアニソンバーや、小倉城の宣伝を担当する社団法人の担当者が名刺に「筆頭家老」と書いているなど、ユニークな魅力が存在する。休日に混雑せずに買い物が楽しめる「チャチャタウン小倉」もいい感じだ。 北九州市は、ときに 「修羅の国」 として恐れられる。この言葉は、過去の暴力団問題や治安の悪化に関連して使われることが多い。つまり、北九州市がかつて抱えていた社会問題を強調する一方で、地域の文化や魅力を無視した偏見を含んでいる。 しかし、実際には魅力的な土地である。商業面では福岡市に及ばないかもしれないが、住みやすさや移住のしやすさという点ではむしろ福岡市を上回る魅力を持っている。 旦過市場の再整備は、こうした北九州市の潜在力を具現化する絶好の機会となるだろう。100年の歴史を持つ市場が地域コミュニティーの核として、新たな人々を温かく迎える場となることで、北九州市の新たな発展の象徴となることが期待される。
昼間たかし(ルポライター)