歯学博士照山裕子の100歳まで食べられる歯と口の話

「100歳まで食べられる歯と口の話」＜14＞ 　歯科医という職業柄、直接お会いする方はもちろん、テレビに出ている方々の口元にどうしても目が行ってしまう癖があります。いまや海を越えたスーパースターとなった大谷翔平選手ですが、まぶしいほどに健康的な白い歯が印象的な好青年、というのが私の中の最初のイメージでした。彼がアメリカに渡った頃、「どうやら矯正を始めたらしい」という話題が同業者の間で盛り上がっていました。インタビューなどで口元が映し出される際に、マウスピース矯正で歯を動かすために装着する「アタッチメント」という突起が見えていたからというのがその理由なのですが、やはり世界で活躍するような選手はこうした知識もぬかりなく、さすがだなと感心したのを覚えています。 　スポーツで最大限のパフォーマンスを発揮するためには、上下の歯がしっかりかみ合うことが非常に大切です。体幹の安定や瞬発的な筋力向上など、さまざまな医学的効果が実証されています。このため、虫歯で歯が欠ける、適合の悪い詰め物や被せ物が入っている、歯周病で歯がぐらついている等の症状は真っ先に改善すべき優先事項です。プロスポーツ選手だけでなく一般の方でも、こうした症状が口の中にあれば頭痛を引き起こしたり、顎（がく）関節症などの不調によって生活の質が低下することは十分に考えられます。高齢になれば転倒リスクが上がるなど、健康寿命にも直結する問題です。 　日頃のケアを怠らないことはもちろん要になりますが、定期的な検診でプロの目によるチェックを取り入れる習慣も大切です。スポーツ時のけがから歯や顎を守るためには、専用のマウスピースを作製することが常識となりつつあります。歯列矯正に関して、骨格的な問題が含まれるケースでは保険診療が適用されることもありますので、まずは相談だけでも受けてみてはいかがでしょう。