『逃げ恥』から『わたナギ』を経て『西園寺さん』へ TBS火曜ドラマが更新する“家族”の形
TBS火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』(以下、『西園寺さん』)は、アプリ制作会社「レスQ」のプロダクトマネージャーとして働いている西園寺一妃(松本若菜)が、シングルファザーで天才エンジニアの楠見俊直(松村北斗)と娘のルカ(倉田瑛茉)といっしょに“偽家族”を作っていくラブコメだ。 【写真】火曜ドラマの分水嶺となった『逃げるは恥だが役に立つ』 西園寺さんは「やりたくないことはやらない」をモットーとしており、家事を全くやらない。同時に判断が素早く、迷った時はワクワクする方を選択する性格で、愛犬のリキと暮らすために一軒家を衝動的に購入してしまう。 合理的に物事を考え、判断が早い西園寺さんは仕事ができる優秀な女性だが、同時に自己完結した性格で、友人であっても他人が自分の生活圏に入ってくることが苦手だった。そのため、結婚して他人と同居することは無縁だと思っていたが、火事で家を失った楠見とルカを心配して、しばらくこの家で暮らさないかと同居の提案をしてしまう。 原作は『ホタルノヒカリ』(講談社)の作者として知られるひうらさとるの同名漫画(講談社)。ドラマ版『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)は、仕事はできるが恋愛に興味がなく休日は家でダラダラしている20代後半の雨宮蛍(綾瀬はるか)が、会社の部長と同居生活を送る中で変わっていく姿を描き、人気作となった。 『西園寺さん』の主人公や、秘密の同居生活を送る展開は『ホタルノヒカリ』と重なる部分はあるが、生活の中心にあるのが育児なのが、本作の大きな特徴だろう。 『西園寺さん』が放送されている火曜ドラマは、人気少女漫画を原作のラブコメ作品を巧みに映像化することに定評がある。キュンキュンする男女の楽しいやりとりが多くの火曜ドラマの見どころだが、同時に現代の働く女性が直面する悩みを丁寧に拾い上げることで、ラブコメと社会性を両立させたテレビドラマを送り出してきた。 嚆矢となったのは、2016年の『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系/以下『逃げ恥』)だろう。派遣切りにあって無職になった森山みくり(新垣結衣)が家事代行業の仕事で知り合ったシステムエンジニアで恋愛経験のない津崎平匡(星野源)と、世間を欺くために契約結婚をする本作は、夫婦を会社のような従業員と雇用主の契約関係に見立てることで、新しい結婚観を提示する社会性のあるラブコメとして大ヒットした。 『逃げ恥』の成功は、その後の火曜ドラマに大きな影響を与えており、秘密を抱えた男女が同居生活を送るラブコメが多数作られている。