NHKオンデマンドの値下げ・受信契約者の無料化は「早すぎる議論」…黒字蓄積には“営利”懸念も
過去のNHKの番組を見られる有料動画配信サービスNHKオンデマンド(NOD)の登録会員が今年度上半期で350万人を超えた。長年悩まされた累積赤字が昨年度解消され、黒字化が進むが、値下げや受信契約者が利用する場合の無料化といった話は聞こえてこない。(文化部 辻本芳孝)
NODは、地上波や衛星放送の番組を、国内限定でパソコン、スマートフォン、タブレット端末などで見られる。毎月約500本を放送後に配信する。10月末時点で、過去の大河ドラマや連続テレビ小説(朝ドラ)、ドキュメンタリーや伝説のコンサートなど約1万6000本を視聴でき、無料で見られる番組もある。今年度上半期の視聴数トップは朝ドラ「虎に翼」だった。
受信契約の有無にかかわらず利用料が必要で、見放題パック(税込み月額990円)が人気だ。動画配信サービス「U―NEXT」「Amazonプライムビデオ」やケーブルテレビ「J:COM」経由でも視聴できる。
2008年度のサービス開始時は「3年で単年度黒字、5年で累積赤字を解消」と強気な見方でスタートした。だが、実際には会員数が伸びず、12年度には累積赤字が最大の79億円にまで拡大した。
13年度の朝ドラ「あまちゃん」のヒットで利用者が増大し、初めて1億円の単年度黒字を達成。その後は堅調に推移し、昨年度は21億円の黒字を記録した。このうち7億円を費やして、当初予定より10年遅れてようやく累積赤字の解消を果たした。
権利処理、設備改修を優先
受信契約者にはNODを無料にすべきではないかという声が以前からあった。例えば、09年、北海道・函館で行われた「視聴者のみなさまと語る会」でも「デジタルに変わったメリットを視聴者に分けるという意味で無料にならないだろうか」と意見が寄せられた。
累積赤字がなくなった今こそ、値下げや無料化の機会とも思える。だが、今年1月の定例記者会見で稲葉延雄会長は「設備投資など色々支出がある中で収支均衡を維持していくという課題がある。値下げうんぬんというのは早すぎる議論だと思う」と否定的な見解を示した。